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ごあいさつ

 北海道函館市の公立大学で教員をしている川越敏司と申します。同姓同名の経済学者がおりますが、それはわたしです。川越達也という料理家がおりますが、縁戚関係はありません。

 2010年8月より、本業の他に小説を書き始めました。5年以内に新人賞をとってデビューできなければ、才能がないとあきらめ、おとなしく本業のみに戻る予定です。

 現在は、『SFマガジン』「リーダーズ・ストーリイ」、『小説現代』ショートショート・コンテスト」、「電撃リトルリーグ」、「コバルト短編小説新人賞」など、短編やショートショート中心に応募し、力を蓄えています。SF、ミステリ、恋愛、ホラーなど、色々と手がけています。

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[代表作]

「星々がぼくの目的地」(SF)

「旅の終わり」(ミステリ)

「サバイバル・ロッタリー」(SF)

「余命」(SF)

「手品」(純文学)

「時には遊女のように」(ミステリ)

「マイ・ファニー・バレンタイン」(ラノベ、恋愛)

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[受賞歴・掲載歴]

「暗闇の中の光」(第157回コバルト短編小説新人賞、もう一歩の作品

「インディアン・ポーカー」(第3回創元SF短編賞、第1次選考通過、2次落選

「皮肉な方程式」(第3回創元SF短編賞、第1次選考通過、2次落選

「インディアン・ポーカー」(『SFマガジン』2011年10月号「リーダーズ・ストーリィ」、作品掲載

「五人のパパ」(『SFマガジン』2011年6月号「リーダーズ・ストーリィ」、選評掲載)

「ロボットの沈黙」(『SFマガジン』2011年6月号「リーダーズ・ストーリィ」、選評掲載)

「水たまり」(『小説現代』2011年5月号「ショートショート・コンテスト」、選考通過、第9席

「老年期の終わり」(『SFマガジン』2011年4月号「リーダーズ・ストーリィ」、選評掲載)

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 右側のカテゴリーで「創作」とあるのがブログ掲載作品です。分野ごとに整理しています。

 作品は「ブクログのパブ―」にも公開されています。
http://p.booklog.jp/users/tosh8

 また、投稿記録は以下のウェブページに掲載しています。また、メールでの連絡先もこちらにございます。
http://www.fun.ac.jp/~kawagoe/sakuhin.html

 この記事の次からが最新の記事となっています。書きおろし恋愛ものから、古典ギリシア語からの翻訳ショートストーリーまで、様々なお話をお届けしています。そのうちフランス語からの翻訳ストーリーもお届けできると思います。ほとんど備忘録程度ですが、本の紹介も随時行っています。どうぞお楽しみください。

2012年5月17日 (木)

ジョルジュ・シムノン『13の謎』(その5)

 ずいぶん久しぶりにジョルジュ・シムノン『13の謎 Les 13 Mysteres』を取り出し、第5話「B...高校での盗難 Le vol du lycee de B...」を読み終えました。

 校長の書斎にある鍵付きの抽斗に仕舞ってあった、肉屋への支払い用のお金が盗まれた。だが、鍵をこじ開けた形跡はなく、抽斗を無理やり開けようとした形跡もない。全寮制の学校で、門衛は誰も事件の夜、敷地を出入りしていないという。

 容疑は生徒の監督役の青年に向けられた。彼の部屋には、警察の科学捜査に関する専門書があり、生徒たちには「自分なら警察の目を欺いてみせる」と豪語していたという。また、彼は毎晩のように、自分の部屋から外に向かって懐中電灯で合図しているのも目撃されていた。だが、彼はあくまで犯行を否認している。

 では、誰がどうやって盗んだのか? 真相はあまりにばかげています。このミステリ・ショートショート集は、シムノンが本格ミステリを書いていた頃の貴重なもので、非常に楽しめるものですが、今作はそりゃないよ!って感じです。残念ながら、第5話は駄作です。

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2012年5月12日 (土)

EQMM 7月号掲載作品の講評(後半)

 EQMM 7月号掲載作品の講評(後半)です。

 評価の方ですが、A(かなり良い)、B(良い)、C(普通)、D(悪い)としました。

 作品の文学的完成度とかは抜きにして、提示された謎の不思議さ・新鮮さ、推理の論理性・緻密性、解決・真相の意外性という3つの要素から判断しました。ですので、評価がC(ミステリとしては普通)でも読み応えのあった作品というのはありました。

 以下は読んだ順番です。

Barbara Arno Modrack, "Acting on a tip"
落ちぶれて仕事をなくした記者は田舎に引き込み、今では看護師の妻に養われている。そんな田舎で連続殺人。彼は記者に返り咲くチャンスとばかりに張り切って。。。というお話。事件解決の手がかりは、今風に高校生の子どもたちのフェイスブックでのやり取りから得られるというもの。しかし、そこからの推理は平板。誰でも気づきそうなものである。
評価はC

Judith Cutler, "What the butler saw"
歴史ミステリ。1814年エクゼターにあるお屋敷で、滞在中のゲストである婦人のダイヤのティアラが盗難にあう。部屋係のメイドに嫌疑がかけられるが、まじめな彼女がそんなことをするはずがない。彼女と恋中の召使が自分がやったと自白してくるが嘘っぽい。しかし、彼は何かを隠している。さて、それは。。。派手な謎解きはないが好感のもてる1作。
評価はB+

Donald Olson, "Drowned in a sea of dreams"
短めの短編。学校が休みの間、親類の子どもを預かったが、仕事で世話が出来なくなった男が、その子の世話をするように年配女性に頼む。だが、一緒に過ごすうち、その男も子供も何か怪しげな相談をしているらしく。。。というお話。ドナルド・オルスンは「ミステリ・マガジン」に翻訳がいくつかある、短編ミステリの大家。今回の作品が遺作のよう。最近お亡くなりになったようです。
評価はC

James T. Shannon, "Shame the devil"
警官のギルバートは、12年前に殺されて白骨化した死体が森で発見された記事を見る。被害者は、彼のいとこの女性をストーカーしていた男。いまは幸せな結婚をしている彼女の過去にいったい何が? 嘘が嫌いな彼女がついた一生に一度の嘘とは? というお話。
評価はB-

Scott Mackay, "Cruel coast"
歴史ミステリ。1806年、かつて愛した女性の夫が、ケープタウンからの船旅の途中で殺害され、捜査を開始した警官。あいにく船は嵐で座礁し、わずかな人が生き残った。その中で、彼女の夫は身体を斧でバラバラに刻まれ、箱に詰めて流されていた。医師であった夫が看病していた精神疾患の女性が犯人? だが、生き残った乗客が意識を取り戻すたびに、新たな証言が得られて、やがて真相が明らかになる。。。というお話。
評価はB-

Grant O'Neil, "The Malibu waltz"
初投稿作品部門掲載。ロス市議会議員の新妻に恋をした元警官。彼はかつてやはり不倫で、口論の末、相手の夫を誤って死に至らしめて退職を余儀なくされた過去があった。彼は再び同じ過ちを犯すのか。。。というお話。
評価はC

 だいたい1週間で読み終えられました。アルフレッド・ヒッチコック・ミステリ・マガジン(AHMM)も購読してみたい気がするのですが、た ぶん、そんなことをした瞬間に忙しくなってどっちも読めなくなるんだろうなあと思います。でも、AHMMのほうが自分好みだったらどうしよう?

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2012年5月 9日 (水)

ヴィクトリア朝を舞台にした映画たち

 GWに入る寸前にインフルエンザになり、GW中はどこにも出かけられなかったので、家でたまっていたDVDで映画鑑賞をしました。

 今回特に力を入れて見たのは、ヴィクトリア朝を舞台にした映画たちです。具体的には、ジェーン・オースティン原作の「エマ」「プライドと偏見」「いつか晴れた日に」の3作に、シャーロット・ブロンテ原作の「ジェイン・エア」です。

 「エマ」はオースティン原作と同じタイトルですが、友人・知人の縁結びのキューピッド役を自任していたエマが、今度は自分も恋に落ちて。。。というラブ・コメディです。「恋に落ちたシェイクスピア」や「大いなる遺産」でとっても上品な色っぽさを見せたグィネス・バルトローさんが、かわいい感じの役を演じていて新鮮でした。

 「プライドと偏見」もオースティン原作と同じタイトルですが、こちらは身分違いの恋がテーマ。階級制度の重さがヒシヒシと伝わってくる中で、まっすぐりりしく生きていく主人公。オースティンの作品でも特に人気が高いのがわかる気がします。

 「いつか晴れた日に」は、オースティンの「分別と多感」が原作。いつも自分を押さえて生きる分別のある姉と、詩や美しいものが大好きで華やかな恋にあこがれる多感な妹。それぞれの恋の行方を対称的に描いたこの作品は、後半シェイクスピア悲劇のような怒涛のラストに向かって行きます。わたし的には、今回見た3作の中では一押しですね。ちなみに、シェイクスピアのソネット集が劇中、重要な役割を果たします。

 「ジェイン・エア」は、身寄りがなく預かってもらっていたおばに寄宿舎にやられたジェインの子ども時代から始まります。周りから蔑まれながらも、まっすぐ自分の意志を曲げずに生きようとするジェインのけなげさがまず泣けます。そして、大きくなって家庭教師(ガヴァナス)となったジェインは、あるお屋敷に雇われます。そこにはどうやら幽霊が出るらしく、お話はゴシック・ロマンスの色彩を帯びてきます。そして、気難しい屋敷の主人と次第に心をかわしていくジェインだが、階級の壁が邪魔をして、二人の恋の行方に暗雲が立ち込めていく。しかし、苦難を乗り越えて結ばれようとする二人の前に、あの幽霊の正体が明らかにされ。。。と、怒涛の展開は目が離せません。

 何より、わたしはジェイン役のシャルロット・ゲンズブールの大ファンである。設定では器量が良くないはずなのだが、シャルロットだと誰がほれてもおかしくない! という気になりますよね。一瞬、母国語のフランス語を話すシーンがあるのですが、そこがとてもいいです。シャルロットのウィスパー・ボイスに思わずクラクラとさせられます。

 最後に、GW前に見たのですが、ヴィクトリア朝つながりで「大いなる遺産」もDVDで見ました。ただ、お話は現代アメリカに置き換えられています。貧しい家庭に生まれた少年が、やがてその絵の才能を認められて個展を開くようになる。しかし、その背後にはある秘密が。。。という内容です。イーサン・ホークとグィネス・バルトローが水飲み場でキスを交わすシーンは大変色っぽくて素敵です。


 

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エラリー・クイーン・ミステリ・マガジン(EQMM)購読開始

 この5月から、世界的なミステリ雑誌の老舗、エラリー・クイーン・ミステリ・マガジン(EQMM)の購読を開始しました。GWの間に届いた7月号から読み始めています。

 今回は、10本の短編と1本のショートショートが収められています。毎日1本ずつ読んで、いまちょうど半分読んだところで、中間報告です。すでにTwitterに書いた作品紹介に、わたしなりの評価を書いてみました。

 評価はA(かなり良い)、B(良い)、C(普通)、D(悪い)としました。以下は読んだ順番です。

Paul Halter, "The man with the face of clay"
「フランスのディクスン・カー」と呼ばれるポール・アルテの短編。日本で紹介されているツイスト博士ものではなく、美術評論家(?)オーウェン・バーンズもの。ギルガメシュ叙事詩や聖書に描かれた大洪水の痕跡の発掘調査から帰った男が密室で殺されている。部屋には翼をもつライオンの不気味な像が。これは呪いか?という怪奇風の不可能犯罪で、いつものアルテ節。安楽椅子探偵もの。
評価はA-。

Barbara Nadel, "Death in the time machine"
第1次世界大戦に従軍経験のある祖父は、電気もガスもない生活をしている。まるでそこだけタイムマシンで1929年で止まったかのよう。そんな祖父の家の裏庭に身元不明の男の死体が見つかって。。。というお話。バーバラ・ナデルの「タイムマシンの中での死」はSFミステリではない。なんだかクリスティ的なうさんくさい家族を巡るお話。だんだんと真相に近づいて、う~ん、こんなもんかなあ、と思っていると、最後にどかん!とやられました。さすが、世界のEQMMに掲載されるだけあって、転んでもただでは起きない、という感じでした。ちなみに、バーバラ・ナデルさんは、シルバー・ダガーを受賞した『イスタンブールの記憶』が翻訳されているようですね。
評価はB+。

Brendan Dubois, "His daughter's island"
ある大金持ちの所有する別荘がある島。その息子が島で催した乱痴気パーティで、ある男の娘が死んだ。事件をもみ消そうとするその金持ち親子に、娘の父親は奇想天外な方法で復讐を開始する。。。というお話。
評価はB-。

N.J. Cooper, "Diagnosis death"
これはショートショート。かつて画家を目指していたが、挫折し、いまは国際弁護士のマルゴ。余命いくばくもない彼女は、かつて駆け出しの画家だった自分を見出し、捨てた男に会いに行き。。。皮肉な結末が悲しいお話です。
評価はC。

Mike Baron, "Five stares"
マイク・バロン「五つ星」を読んだ。指折りのレストラン批評家が、きな臭いイタリア・マフィアがからんでいそうなレストランの取材に行かされる、そこで彼が発見したものは。。。というお話。NexusというSFを書いている作家らしいですね。
評価はC。

なんだか読み進める度に評価が下がっているようですが、それは偶然です。本格的な謎解きは少ないんですね。評価が低いのはそのためです。

まだ読んでいない中には歴史ミステリが2つあるので、そちらには期待しています。続きは、残りの作品を読んでから公表します。

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2012年4月29日 (日)

『SFマガジン』「リーダーズ・ストーリィ」応募!

 今月の初めの方で一度書いた原稿があったのですが、書き終えた段階ではちょっと暗い話だし、だめかなあと思ってそのまま放置していました。

 それで、今週になって久しぶりに取り出して読んでみると、なかなかいい感じのサスペンス小説になっていて、自分で言うのもなんですが、引き込まれる感じだったので、イケるかも!と思ったので、若干の文章の手直しを経て投稿しました。

 今回は、主人公の一人称で書いているのですが、サスペンス感を高めるため、最初から最後まで人称代名詞(わたし、僕、俺など)は一切使わないで書きました。ちょっとした実験です。はじめは無理かなあと思ったのですが、意外に簡単にできました。

 SFに関しては、色々と作品のアイディアがあるのですが、最近はどうも5枚前後のショートショートでは書ききれない感じになっていますね。短編の方が伸び伸び書けるようです。

 第4回創元SF短編賞については、第3回が決まる前からすでに考えているストーリーがありますので、まずはそちらから書いていきたいと思います。宇宙ものとパラレルワールドもので、どちらもミステリー仕立てになります。

 ともかく、「川越さんと言えばSFミステリーだよね!」と言われるような作品を書き続けていきたいと思っています。

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2012年4月26日 (木)

「宙に旅立つ時」 [SF]

 『SFマガジン』「リーダーズ・ストーリィ」応募作。没でした。

 この作品は、オクタヴィア・バトラーの名作短編「血を分けた子供」とレイ・ブラッドベリ「ウは宇宙船の略号さ」へのオマージュのような作品です。アルフォンス・ドーデの「最後の授業」も多少影響があります。

 この作品の英語版が、オンラインSF誌AnotherRealmに公開されていますので、興味のある人はご覧ください。色々と変わっている所があります。


Time of departure
by Toshiji Kawagoe

http://anotherealm.org/modules/AMS/article.php?storyid=213


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「宙に旅立つ時」
by 川越敏司


 カミーユは急いでいた。今朝は出発準備に忙しくしていて、家を出るのが遅れたのだ。いつもの通学路にはもう誰の姿も見えなかった。

「もう朝礼は終わったかなあ」

 首筋や脇にじっとりと汗が噴き出してくるのもかまわず、カミーユは走り続けた。どのみち冷房が追いつかないほどの気温なのだ。ゆっくり歩いていっても身体中に汗をかくのは変わらない。

 校門が見えてくるとカミーユはほっとしてその歩みを緩めた。いつもは校門前で目を配っている生活指導の先生の姿は見えない。カミーユは誰もいない校門を通り過ぎ、自分の教室がある校舎に飛び込んだ。

 フル回転で稼働する冷房も、この異常なほど高温の外気に対して焼け石に水だった。上昇し続ける地球の気温から人類を守るために地殻を切り崩して開発されたジオ・フロント。そのパリ第三中学校にカミーユは属している。カミーユが教室に入ると、案の定そこには誰もいなかった。

「もうチャペルの時間がはじまってる!」

 カミーユは慌てて階段を駆け下り、渡り廊下を抜けて、校舎の奥にあるチャペルへと急いだ。音を出さないようにそっとドアを開けると、もう牧師先生の説教が始まっていた。カミーユはいつも自分のクラスメイトに割り当てられている座席へと向かった。薄暗闇の中で空いている席を探していると、ふいに肘をつかまれた。

「カミーユ、こっちだ」

 クラスメイトのジャンだ。カミーユが木製のベンチに腰掛けると、ジャンが話しかけてきた。

「今日は来ないかと思ったよ」

「ごめん、荷物の準備に手間取ってさ」

 カミーユは、ジャンがこうして今も友だちでいてくれることに感謝していた。

 この中学校に通う生徒のうち、選ばれたのはカミーユだけだった。そのことが明らかになってから、こそこそと陰口を叩く者や、あからさまな敵意をもってカミーユに当たる生徒たちが絶えなかった。カミーユはどうして自分が選ばれたのかよくわからなかったので戸惑いを隠せなかった。そんなカミーユにとって唯一の救いだったのがジャンの存在だった。


「ジャン、君も一緒に行ければいいのに。ねぇ、僕が役所の人に頼んでみようか?」

 いつかカミーユがジャンにそんなことを話したことがある。そのときのジャンの剣幕をカミーユは忘れることができなかった。

「バカ言うな! あんな化物たちと一緒に暮らすなんて、俺はそんなの絶対ごめんだよ!」

 そこまで口にして、ジャンはハッと口をつぐんだ。言ってはいけないことを口にしてしまったことをジャンは激しく後悔したが、もう後の祭りだった。

「そうだよね。僕だって嫌だよ。でも、父さんも母さんも、それしか助かる手段がないから、僕だけでも生き残ってほしいって言うからさ……」

 カミーユは次々とこぼれ落ちる涙を袖口でぬぐった。

「カミーユ、ごめん。俺が悪かった」

 だが、ジャンは泣きじゃくるカミーユを抱きしめることができなかった。


 太陽系は死を迎えようとしていた。爆発寸前の太陽がもたらす強力な熱で地球表面は灼熱地獄と化していた。急ピッチで開発されたジオ・フロントに逃げこんだ人類は、刻一刻と上昇し続ける気温の前になすすべもなかった。すでにそこでさえ、冷房を最大限稼働させても暑さをしのげない状態に追い込まれていた。

 「彼ら」がやってきたのはそんなときだった。イソギンチャクのような形状に近いが、身長が優に三メートルはある異星人たちは、地球人を救いに来たと告げた。衛星軌道上に待機している彼らの母船に、選ばれた少数の人間を収容するということだった。だが、その候補者は、長期の宇宙航行の間、彼らとの共生生活が可能な体質を持っている者に限るとされた。

 彼らとの共生生活とは、その身体に彼らの種を宿すということだった。彼らは他の生物に卵を植え付けて育てる習性があったのだ。卵が成熟すると、それを孵化させた母体がどうなるかは一切知らされていなかったが、それでも生き残りたいと思う者は大勢いた。

 一方、異星人の種を宿すことをおぞましいと感じる人々からは、選ばれたカミーユのような者たちは蔑まれた。適合する者はすべて第二次性徴を迎える前の子どもであったことから、子供を手放さずに太陽系と共に滅びることを選ぶ親たちも少なくなかった。


「それじゃ、そろそろ僕は行くね」

 チャペルの時間が終わると、カミーユは時計を見ながらそう言った。ジャンは無言で立ちつくしていた。

「ここにまだひげの剃り残しがあるよ」

 そう言ってカミーユはジャンの頬に手を伸ばした。ジャンは無言でその手を握りしめた。

「ジャン、僕はきっと君のことを迎えにくるよ」

 ひげの生えそろったジャンが異星人に選ばれる可能性はもはやない。それでも、カミーユはそう言わずにはいられなかった。

 この先、地球に残された俺たちと、あの異星人たちに「保護」されたカミーユらのどちらが長生きできるのだろう? 手を振りながら去っていくカミーユを見つめながら、ジャンはそんなことを考えていた。


(了)


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「取り残されて」 [SF]

 『SFマガジン』「リーダーズ・ストーリィ」応募作。没でした。

 ちょっと暗い話ですしね、選者好みではないのかもしれません。まあ、別に選者好みをねらって書いているわけではないので、どうでもいいことですが。一応、ロボット工学三原則がからんでいます。


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「取り残されて」
by 川越敏司


「まだ通信は途絶えたままだわ」早川いすずがレシーバを外しながら答えた。

「あきらめるな! 呼びかけを続けるんだ」

 秋田はそんな彼女を励ますように檄を飛ばした。もうすでに一週間以上も本土とは連絡が途絶えたままだ。

「モービルを出すことはできないの?」

「さっきから伊藤が取り組んでいるんだが、ロボットたちはまだストライキを続けている」

 基地周辺では、再び活発化した恒星からの電波バーストの影響で通信が乱されていた。そこで、通信機を搭載したモービルをなるべくその影響の少ないところまで移動させ、そこから本土に連絡を取る計画だった。だが、モービルを制御するロボットが頑として動こうとしないのだった。

「このままじゃ、わたしたち全員ここで餓死してしまうわ」

 早川ら第四次観測隊がこの惑星に到着してからほぼ二年が経過している。電力は半永久的に駆動を続ける核融合炉でまかなっているので心配ないが、食料は別だ。予定では一カ月前に来ているはずの本土から迎えがまだ到着しておらず、状況は予断を許さなかった。

「他のロボットたちはどうなの?」

 この基地では、モービルの操縦の他、様々な作業にロボットが用いられていた。秋田がコンソールをいじって情報を表示しようとしたその瞬間、伊藤が慌てた様子で下の格納庫から呼びかけてきた。

「大変だ! ロボットたちが勝手に基地の外に出て行っているぞ!」

 秋田がモニタにロボットの動きを表示させると、確かに何台ものロボットが基地から遠く離れていくのが確認できた。

「ねえ、どうするの? ロボットに置き去りにされたら、わたしたち……」

 自分の座席を立った早川は、モニタの前で茫然と立ちすくむ秋田の腕にすがりついた。長い基地での生活の中で二人は親密な関係となっていたのだ。

「ロボットが人間をこの極冠の星に置き去りにするなんてありえない。ロボット工学三原則ってものがあるんだぞ!」

 この基地で使用しているロボットはロボット工学三原則に従ってプログラムされている。それによればロボットが人間の命令を無視することも、人間を食料の尽きかけた基地に置き去りにして命の危険にさらすようなこともありえないはずだった。

「俺たち、ロボットなしでこれからどうすりゃいいんだ?」

 そんな伊藤の呼びかけに秋田は何も答えられずにいた。早川はそんな彼の胸に顔をうずめて嗚咽していた。彼女の背に回した秋田の指先は、外の氷の景色よりもずっと冷たくなっていた。


「俺はこんなところで死ぬのはごめんだ!」

 重い通信機を背中にかついだ伊藤は、見渡す限りの大氷原へと飛び出していった。秋田と早川はそんな彼に引き返すよう必死に呼びかけたが、そのうち伊藤の姿はブリザードの中で見えなくなった。

「とうとう二人きりになっちゃったわね」

 もちろん、二人ともロマンティックな気分になれるような状況ではなかった。当面の食料をどう調達すればよいのか、それが課題であった。たとえ伊藤の分を勘定に入れても、切りつめてあと一週間もつかもたないかだ。

 二人はなすすべもない絶望的な状況で互いの身を寄せ合った。早川の嗚咽の声だけが室内にうつろに響いた。

 それから何時間が経過しただろう。突然、通信機にノイズ混じりの音声が入った。二人ははじかれたように立ち上がり、通信装置をオンにした。

「伊藤、おまえなのか? いまどこにいる?」

「ロボットたちに捕まってな。いま基地に連れ戻されている所さ」

 基地に戻った伊藤が二人に話し始めた。

「ようやく磁気嵐の影響がないところまで到達して本部に連絡してみたが応答はない。月基地の記録にアクセスしてみたら、テロで核融合炉が爆破されて地球が死の星と化したことがわかったんだ。俺たちにもう帰る故郷はない。それを知って俺は自殺しようとした。だが、偶然通りかかったロボットに引きとめられた。こいつらは俺たちの食糧を探しに出かけていたんだよ」

「ロボットたちは地球が滅びたことをわたしたちに悟らせまいとしていたのかしら?」

「三原則に従えばそうなるな。俺たちが絶望して自殺したりしないよう秘密にしていたんだろう。幸い、この星にも食料となる生物がいるようだし、これからどう暮らしていくか考えないといけないな」

 秋田はなおも話し続ける伊藤の背後に静かに回ると、その銃を抜き、彼の頭を撃ち抜いた。早川が甲高い叫び声を上げた。

「この星に男二人と女一人。いずれこいつとは君の奪い合いになると思ったんだ」

 そんな秋田の姿に怯えた早川はとっさに自分の銃を抜いた。

「来ないで!」そう叫ぶや否や、彼女は自分のこめかみを撃ち抜いた。

「そんな……」

 二人の遺体を前にして、これからの孤独な生活に絶望した秋田は、まだ熱い銃口を自分の胸に押し当てた。だが、異常事態に気づいて駆けつけたロボットに取り押さえられ、その銃は取り上げられた。

「頼む、死なせてくれ!」

 ロボット工学三原則に従うロボットに、彼の願いを聞き入れる余地はなかった。


(了)


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2012年4月25日 (水)

コバルト、ノベル大賞への道

 まだコバルト短編で入賞していない段階なのですが、先日、短編向けにファンタジー作を1つ書いたら、また別のファンタジー作を思いついて、これがどうやらノベル大賞規定の100枚くらい書けるかもしれないと思ったので、このGWにでも一度書いてみようかと考えました。

 はじめて書く長さなので、ちゃんと物語としてまとまっているか、最後までテンションを維持できるか、色々と心配なことがありますが、とにかくチャンレンジしてみようかと思います。

 主人公は妖精と旅をする男の子。出生の謎があり、町から町へと旅をしている。妖精さんはその男の子が好きで一緒に旅しているけど、ある理由があってなかなか恋が進展しない。

 一方で、ある国の王子。妻がある呪いに犯されていて、その呪いを解くべく、旅をしている。そして、さっきの男の子と出会う。お互いに反目しながらも、やがて心を通わしていく。

 かなり色々なところをぼかしていますが、こうした2組の男女の冒険を主軸に、国を揺るがす大きな陰謀に4人が立ち向かっていくというのがお話のメインです。極めて王道のファンタジーです。ただ、一応ミステリを志向していて、色々と伏線を張って、最後の方でアッと言わせる仕掛けです。

 これまで歴史ものを書くために勉強したことや、最近研究している妖精学などをぜいたくに盛り込んで、2組の悲恋カップルが最後には戦いを経て幸せになっていく物語を目指しています。

 構想だけはでかいんですが、ちゃんと書けるか心配です。とにかくがんばって書いてみます。

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2012年4月22日 (日)

「新しい国への扉」 [純文学]

 まだ自分の目では確認していませんが、平渡さんのブログとハットリミキさんのTwitterから、自分の作品も落選しているとわかったので、小説現代ショートショート・コンテストに応募した作品を公開します。

 もとはフェリシモ文学賞に応募した作品だったのですが、ちょっとダークな感じだったので、小説現代SSならどうかと思ったのですが、だめでした。


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「新しい国への扉」
by 川越敏司

「どうしてお外に遊びに行っちゃいけないの?」

 あたしが何度そう問いかけても、おじさんは答えてくれなかった。

「その人形と遊んでいなさい」

 素っ気なくおじさんがそう言った。

「お人形さん遊びはもう飽きちゃったの」

「では、お絵かきでもしていなさい」

「でも、暗くてよくわかんないわ」

 おじさんはそれ以上何も言わずに、テーブルの上にあった食器を下げて階段へと向かった。ギシギシと音を立てる木の階段を上ると、おじさんがドアを開けた。

 とたんに向こうの部屋の明かりが射しこんできて、あたしは眩しさのあまりとっさに手をかざして目を細めた。再びいつもの暗闇に戻ったかと思うと、おじさんの姿はいつの間にか、あのドアの向こうに消えていた。

 あたしはおじさんの後を追って階段を駆け上り、両手でドアを叩いた。

「ねえ、開けて! お願いだから、ここから出して!」

 再びドアが開かれ、おじさんが姿を見せたかと思うと、おじさんはあたしを階段の下に突き落とした。板張りの床に叩きつけられ、何度か転げまわったあたしは、しばらくは驚きのあまり声を出すこともできなかった。

 やがて、痛みと羞恥心と絶望とが入り混じった、自分でもよくわからない複雑な感情がのどの奥から湧き出し、あたしは床に転がったままの姿勢で声を押し殺して泣いた。

「そこで、おとなしくしていなさい!」

 おじさんはそう怒鳴ると、ぴしゃりとドアを閉めてしまった。

 ふたたび暗闇と静寂の中にあたしはひとり取り残された。そのままどれくらいの時間が経過したのか、窓一つないこの部屋に閉じ込められたあたしにはわからなかった。

 母さんも父さんも、いったいどこへ行ってしまったのだろう。早くあたしを迎えにきてほしい。あたしは胸に下げたロケットを握りしめた。たった一つのあたしの持ち物。この暗闇の中では見ることはできないけれど、そこには母さん、父さん、それに弟のサムエルと一緒に撮った家族写真が入っているはずだった。

 どうしてみんなあたしをおいて出ていってしまったのだろう。それに、あのおじさん。いったいあの人はどこの誰なんだろう? 毎日一度だけ食事を運んでくる他は、一切顔を合わすことはない。話しかけてもいつもピリピリしていて、少しでもあたしがわがままを言おうものなら、さっきみたいに乱暴な扱いをする。

 あたしが何か悪いことでもしたの? それなら何度でも謝るから、あたしをここから出して。母さんたちのいる所へ連れていって。

 あたしはいつも食事の席で父さんが話してくれた神様のお話を思い出していた。神様に選ばれたある偉い人が、奴隷としてこき使われていた人々を助け出し、海を真っ二つに分けて、新しい国へと導いたというお話だ。

 もし本当に神様がいるのなら、あのドアを開いてあたしを母さんや父さんのいる所に連れていってほしい。

 膝をついてあたしがそう祈っていると、ドアの向こうが何だか騒がしくなった。バリバリと雷のような轟音が響いて、ガラスが割れて飛び散る音がした。何人もの人が靴音を鳴らしているのが聞こえる。

 やがて、あのドアが向こう側から激しく打ち叩かれる振動が伝わって来た。メリメリと音を立ててドアの材木が割け、細い明かりが射しこんでくる。裂け目がだんだんと大きくなり、ついにドアが真っ二つに裂けた。

 きっと神様があたしの願いを聞きいれてくださったんだ! あたしは喜び勇んで階段を駆け上った。そんなあたしの前に、またあのおじさんが立ちはだかった。

「だめだ、ここから出てはいけない!」

 おじさんは、これまで見たこともないような形相であたしをにらみつけて、ぴしゃりと言った。でも、あたしの行く手を阻むあのドアは砕かれて、もはや閉じることはない。

「そこをどけて。あたしはお外に出たいの!」

 必死にあたしを通さないようにしていたおじさんを誰かが後ろから殴りつけた。その人があたしに手を差し伸べた。あたしは手を引かれるまま、その人の車のところまでついて行った。

「これから、どこに行くの?」

 あたしがそう尋ねると、その人は答えた。

「君の家族のいるところだよ」

 あたしは久しぶりに故郷ポーランドの街並みを眺めた。車は逆鍵十字(ハーケンクロイツ)の印の付いた赤い旗を翻して、母さんたちの待つ新しい国へと走り出した。


(了)


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コバルト短編、ファンタジー作が完成!

 予告していた通り、昨日の土曜日に、途中色々と中断がありましたが、無事にコバルト短編を書きあげることができました。

 だいたい午後2時半くらいからはじめて、おやつ、子供の病院への付き添い、夕ご飯、おふろ、と色々と中断しながら8時過ぎに最後まで書きました。

 お話は頭の中で全部イメージしていたので、基本的にはすいすい書けました。これから1週間くらいかけて見直して、手を入れていきたいと思います。

 内容についてはすでに書いたので省略しますが、ファンタジー・ラブストーリーです。ちょっとミステリ・テイストでちゃんと伏線が張られて謎解きが行われます。

 主人公の名前ですが、ファンタジーなので西洋風にクローディアとしました。対する王子はフェルディナンド。妖精の名前が苦労しましたが、アピスです。

 過酷な運命を背負わされたクローディア。最後には一応ハッピーエンドになるようにしました。さてさて、コバルト読者さんにはどう受け止められるのでしょうか? ドキドキです。

 次はSF系作品を予定していますが、あまりにもハードな展開になるようでしたら、次回の創元SF短編賞に回します。後は、ヴィクトリア朝もの、ローマものなど、書いてみたい素材はたくさんあります。

 過去や未来のお話が多いですが、現代モノも視野に入れていかないと、と思います。今日は、小説現代向けのショートショートでも書こうと思います。


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2012年4月20日 (金)

コバルト短編、次回作の予定

 新学期が始まり、本業の方も忙しくなり、また春の新番組のチェック(と選別)に忙しく、なかなか次回作の構想を練る機会がなかったのですが、他のコバルト投稿者さんの動きを見て、そろそろ自分も動き出さないと!と思って、プロットを考えました。

 前から次はファンタジーで、と言ってきたので、一生懸命考えたらお話ができました。もう最初から最後までシーンは頭の中ではっきりと映像として浮かんでいるので、後は今週末に書くだけですね。

 今回のお話は、人間の女の子と異形の男の子との淡い恋を描くつもりなのですが、この二人の恋に味付けとして白馬の王子様が登場します。このファンタジー・ラブロマンスをベースに、生物学的知見に基づくファンタジー世界設定と、中世時代の猟奇的犯罪をからませて、お話をミステリー・タッチに膨らませてみました。

 もちろん、血なまぐさいドロドロしたお話ではありません。明るいコメディというわけでもないですが。中世騎士時代のラブと陰謀の物語です。結末はハッピーエンドになるべくしたいと思っています。

 主人公の女性にどれだけ共感してもらえるかが重要だと思うのですが、自分の中では異形の男の子に視点が集中してしまっています。一度書いたら、女性の方に下読みしてもらって、色々と意見を聞いてみたいと思います。そのときはどうぞよろしくお願いします。


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2012年4月18日 (水)

初の海外投稿作品が公開されました

 海外のオンライSF雑誌AnotherRealmは、2カ月に一度、テーマを決めて1000ワード以内のショートストーリーを公募しています。4月・5月期のテーマは「引っ越し Moving」。応募された作品の中から1~3位までが表彰されます。原稿料や賞金はありません。

 それで、海外進出への第1歩として、さっそく作品を応募してみました。以下がその作品です。

Time of departure
by Toshiji Kawagoe
http://anotherealm.org/modules/AMS/article.php?storyid=213

 もとは『SFマガジン』「リーダーズ・ストーリィ」に応募した作品ですが、英語にするにあたって、かなり書き変えています。また、英文の方は、わたしが所属している教会のイギリス人宣教師に見てもらいましたので、初歩的なミスはだいぶ防げているのではないかと思います。

 ただ1か所、たぶん日本語のスペースが入ったためか、表示がおかしな部分があります。ちょうどお話の真ん中当りで、余計な ? が入っています。Camille dried his eyes with his cuff.と"I'm sorry, Camille. I was so upset." said Jean.の間です。ここは ? の代わりに改行が入る箇所です。修正を依頼していますが、直してくれるかどうかは分かりません。

 ストーリー自体は、オクタヴィア・バトラーの「血を分けた子供」とブラッドベリの「ウは宇宙船の略号さ」を足して二で割ったような内容です。あまり新奇性はないかもしれませんね。

 6月に審査があって、結果が発表されるようです。

 しばらくこちらで英語の作品を書く練習をさせていただいて、それからEQMMとかにミステリを書ければいいですね。夢は大きく!という感じです(^^:

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2012年4月16日 (月)

アシモフ『はだかの太陽』

 日々のこと、読んだ本のこと、見た映画のことなどは、Twitterに書くことが多くなりましたので、ブログ更新回数が激減しています。今日は久しぶりに書きます。

 今回は読んだ本のご紹介。といっても古い本なので、な~んだ、と思う人も多いかもしれませんね。アイザック・アシモフの『はだかの太陽』という作品の原著The Naked Sunです。

 これは、『鋼鉄都市』にはじまるSFミステリ・シリーズの第2作です。前回と同様に、地球人の刑事イライジャ・ベイリと惑星オーロラで作られたヒューマノイド・ロボット、ダニール・オリヴァーが主人公で、ロボット工学三原則が重要な役割を果たします。

 『鋼鉄都市』で描かれた犯罪捜査で名を上げたベイリに、再びダニールと組んで事件を解決してほしいとの依頼が来ます。惑星ソラリアで起こった殺人事件ですが、殺害現場には被害者と機能停止したロボットが残されていたが、三原則に従えばロボットが殺人を犯すはずがない。この謎を調査してほしいというのだ。

 現場に到着すると、惑星ソラリアはロボット製造で経済を賄っている星で、ごくわずかの人口しかなく、各自が隔離された住居に住み、各家庭では多くのロボットを使用していた。住民は互いに直接「会うseeing」ことはなく、必要なことは3次元ホログラフィーで互いに「見るviewing」ことで用を済ましている。こうした習慣は幼少期から養われており、逆に人と会うことを極度に嫌う文化を作っている。

 殺害された被害者の自宅には他に妻しかおらず、必然的に容疑は妻に向けられるが、凶器が見つからない。すると、現場に残されたロボットが殺害したことになるが、三原則があるからそれは不可能。また、人と直接会うことを極度に嫌う住民たちがわざわざ被害者の家を訪ねて、直接対面して殺害に至ることもやはり考えられない。こうして、技術的・文化的に構築された密室ができあがっていたのです!

 最終的に犯行の動機も犯行の手段も論理的に明らかになっていき、さらに最後にどんでん返しもあって、ミステリとしての出来栄えは前作『鋼鉄都市』よりも優れていると言っても良いでしょう。最後に関係者全員を集めて(ただし、直接会うのではなく、viewingで見ることを通じて)、動機と機械と手段を明らかにしていく、お約束の展開もあります。

 『鋼鉄都市』が、調査の間にいくつも仮説を立ててはそれが壊れていくというタイプだったのと大違いです。『鋼鉄都市』はこの意味ではコリン・デクスターのモース警部シリーズと似ていますね。ベイリが愉快な推理を披露するところなどそっくりです。それに対して、『はだかの太陽』はもっと正当的なミステリのスタイルをとっています。

 唯一欠陥だと思うのは、犯人の動機の中で、人口の少ない惑星ソラリアの軍事力を強化するための新型ロボット開発という話題がからんでくるのですが、この新型ロボットの設定がいまひとつ説得力がありません。ほんとにこんなもので第1原則を回避できるのでしょうか?

 ただ、複数のロボットを使用して第1原則を回避するというアイディアは、わたしも考えたことがあって、納得のものでした。

 この『はだかの太陽』は、一部のレビューでは駄作と言われていますが、わたし的には全然そんなことはないと思います。英語で読んで、細かなニュアンスを読みとれていないとしても、核となる物語それだけでも十二分に面白い作品でした。残念ながら翻訳は現在入手困難ですが、読んで損のない作品だと思います。

 特に、ロマンスが苦手とされるアシモフが、ベイリとグレイディアとの淡い恋をうまく描いているのも見どころですね。ちなみに、このグレイディアは続編『夜明けのロボット』にも登場します。

 アシモフのロボット・ミステリの設定を踏襲して他の作家が執筆した作品群も存在します。残念ながらほとんど邦訳されていません。これらも読み次第、内容をレビューしていきたいと思います。



 

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2012年4月 6日 (金)

海外進出への第一歩

 小説書きも2年目。公募に少し名前が出るようになって、手ごたえを感じ始めています。

 ただ、やはり日本では新人賞などを取らないと、なかなかデビューは難しい。一方、海外に目を向けてみると、ミステリでもSFでも主要な雑誌では毎号公募をしています。

 アイザック・アシモフの短編集などで、色々な雑誌を転々としてやっと掲載が決まったとか、そんな話が良く書いていますが、学問世界でも同じです。雑誌の傾向などでたまたま採用されなかっただけで、掲載してくれる雑誌もあるかもしれない。

 そういうオープンで自由なのが海外雑誌の魅力ですね。残念ながら、日本の文芸誌では新人賞受賞作以外が掲載される、公募されることはほとんどありません。

 ショートショート以外では、雑誌コバルトが毎号短編を募集しているのが、ほとんど唯一の例ではないでしょうか? その点、コバルトさんは海外雑誌に近いですね。

 さて、そんなわけで、わたしも海外の雑誌に投稿できるようになろうとプロジェクトを始動しました。

 手始めに、SF系のオンライン雑誌AnotherRealmで2カ月に一度開催されているショート・ストーリーのコンテストに出品することにしました。1000ワードまでの作品で、毎回お題が決まっています。4・5月のお題は「引っ越し Moving」です。応募者の中から、第1席から第3席までが選ばれます。ジャンルはSF、ファンタジー、ホラーだそうです。


AnotherRealm
http://anotherealm.org/


 今月SFマガジンに結果が出るはずのショートショート(5枚)を昨日英訳してみました。すると720ワードくらいになりました。ちょうどいい長さです。Wordで2ページ分くらいです。

 こうした海外の雑誌では、だいたい4千から8千ワードくらいの作品が募集されています。だいたい日本語では原稿用紙30~60枚くらいの短編ということですね。

 肝心の英語の方は、辞書をとにかくよく引いて十分に注意していますが、やはりネイティブ・チェックがかかせませんね。学術論文と違って、やはり小説ではわずかなニュアンスが作品の評価を大きく変えてしまいそうですので。ということで、日曜にうちの教会のイギリス人宣教師に見てもらう予定です。

 AnotherRealmは、別に賞金が出るわけでもなく、ただ雑誌のコーナーに作品が出るだけです。ここで十分に力を付けてから、商業雑誌に投稿しようと思います。SFだとアシモフ誌とかがいいかな?

 色々調べて、ミステリではエラリー・クイーン・ミステリ・マガジン(EQMM)をターゲットにしようと考えました。何を大それたことを!とお笑いになる人も多いでしょう。EQMMといえば老舗のミステリ雑誌。数多くの作家を輩出した伝統のある雑誌。レベルは世界一。


エラリー・クイーン・ミステリ・マガジン(EQMM)投稿規定
http://www.themysteryplace.com/eqmm/guidelines/


 実は、EQMMには初投稿者専門のコーナーがあるのです。また、オンライン投稿も可能です。それに、初代編集長のエラリー・クイーンが高校生のヤッフェを育てたように、新人発掘に前向きなところとか、魅力の多い雑誌です。

 ということで、EQMMの定期購読をはじめ、初投稿者専門コーナーに掲載された作品を読んで勉強したいと思います。英語圏で評判のよいミステリの書き方指南書なども手に入れているので、1年後くらいをめどに初投稿といきたいと思います。

 ミステリ系では他に、アルフレッド・ヒッチコック・マガジン、ストランド・マガジンなども公募をしていますので、色々と挑戦できそうです。ちょっとがんばってみます。もちろん、日本国内の公募も続けますよ!


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2012年4月 4日 (水)

第53回講談社児童文学新人賞、応募!

 今日の朝、第53回講談社児童文学新人賞に応募しました。作品のタイトルは「ディラックの海から来た勇者」。実は、岩崎書店主催の第29回福島正実記念SF童話賞・応募作品のリメイクです。

 ラストを中心に全体的に手を入れました。藤あさやさんとゆきのさんに見てもらって、そのコメントを元に色々と直しました。

 なお、岩崎書店さんには事前に問い合わせをして、別の公募に手直しのうえで出しても良いという許可をいただきました。ご理解ありがとうございました。

 ブログ小説家仲間のりんさんもすでに投稿しているとのこと。お互いどういう結果になるか、楽しみですね。

 ところで、この賞の場合、原稿は右上隅を紐で綴じるとありました。わたしのもっているパンチでは10枚程度の紙しか無理なので、原稿を2つに分けて穴を開けました。すると、穴の位置が合わなくて、紐を通すのに苦労しました。また、紐も裁縫箱の中に合った毛糸を使いました。

 で、投稿後、封筒のストックがなくなったので100円ショップに立ち寄ると、綴じ紐が売っていました。両端が固められていて、針がなくても穴に通しやすいものです。20本で100円。なんで今までこれを使わなかったんだろうって思いました。

 パンチについては、SFマガジン「リーダーズ・ストーリィ」常連の田辺ふみさんに教わり、166枚もいっぺんに穴が開けられる器具を注文しました。これで次回からは大丈夫だなと思います。


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