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ごあいさつ

 北海道函館市の公立大学で教員をしている川越敏司と申します。同姓同名の経済学者がおりますが、それはわたしです。川越達也という料理家がおりますが、縁戚関係はありません。

 2010年8月より、本業の他に小説を書き始めました。5年以内に新人賞をとってデビューできなければ、才能がないとあきらめ、おとなしく本業のみに戻る予定です。

 2015年1月より、チェス・プロブレムの創作を始めました。The Problemist, Die Schwalbe, StrateGems, Problem Paradise, KoBulChessなどのプロブレム専門誌に作品が掲載されています。

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[受賞歴・掲載歴]

愚陀佛庵インターネット俳句会2014年10月分・秀逸

「父さんのはさみ」(第6回宮城学院ハートフル童話賞、最終選考

「インディアン・ポーカー」(第9回小説現代長編新人賞、第1次選考通過、2次落選

「懲役千年の刑」(第22回小説の虎の穴、佳作

「山の家に住む少女」(第23回ゆきのまち幻想文学賞、予備選考通過、最終選考落選

「ぎこちないハーモニー」(第47回北日本文学賞、第2次選考通過、3次落選

「新しい国への扉」(樹立社ショートショートコンテスト2012、5等星 [2位] )

「インディアン・ポーカー[短編]」(第19回電撃小説大賞、第1次選考通過、2次落選

"Time of departure"(AnotherRealm、2012年4-5月期コンテスト、第3位入賞

「ハンナの夕食」(第5回宮城学院ハートフル童話賞、最終選考

「暗闇の中の光」(第157回コバルト短編小説新人賞、もう一歩の作品

「インディアン・ポーカー[短編]」(第3回創元SF短編賞、第1次選考通過、2次落選

「皮肉な方程式」(第3回創元SF短編賞、第1次選考通過、2次落選

「インディアン・ポーカー[SS]」(『SFマガジン』2011年10月号「リーダーズ・ストーリィ」、作品掲載

「五人のパパ」(『SFマガジン』2011年6月号「リーダーズ・ストーリィ」、選評掲載)

「ロボットの沈黙」(『SFマガジン』2011年6月号「リーダーズ・ストーリィ」、選評掲載)

「水たまり」(『小説現代』2011年5月号「ショートショート・コンテスト」、選考通過、第9席

「老年期の終わり」(『SFマガジン』2011年4月号「リーダーズ・ストーリィ」、選評掲載)

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 投稿記録は以下のウェブページに掲載しています。また、メールでの連絡先もこちらにございます。

http://www.fun.ac.jp/~kawagoe/sakuhin.html

 この記事の次からが最新の記事となっています。英語や古典ギリシア語からの翻訳ショートストーリーなど、様々なお話をお届けしています。そのうちフランス語からの翻訳ストーリーもお届けできると思います。ほとんど備忘録程度ですが、本の紹介も随時行っています。どうぞお楽しみください。

2016年5月14日 (土)

ピアノでジャズ!(その6)

 昨日、また頼んでいた本が届いたのでご紹介します。これです。

Phil Degreg著、Jazz Keyboard Harmony : Voicing Method for All Musicians

 これは実に素晴らしい本です。内容は、基本的には、II-V-Iをはじめとするジャズの基本となるコード進行ごとに、すべてのキーでコード・ヴォイシングを練習するための教則本です。

 類書とは違ってこの本の素晴らしいところは、このブログで説明してきた2音ヴォイシングから始めているところです。これなら初心者でもすぐに始められます。

 はじめに左手だけの2音ヴォイシング(shell voicing)を練習します。次に、それを右手でやりつつ左手はベース音を叩く3音ヴォイシング。それから4音。。。という風に、段階的により高度なヴォイシングをマスターしていく仕組みです。

 各段階の最後には、ブルースやリズム・チェンジの練習曲(オリジナル)が5曲ほどあり、同じ5曲を各段階で学んだヴォイシングで練習するということになっています。CDも付属しており、これを使って模範演奏を聴いたり、マイナスワンで練習もできます。至れり尽くせりの内容です。

 きっと、この本を見れば、「なんで今まで誰も、2音ヴォイシングからジャズを教えてくれなかったの? これなら挫折しなかったのに!」と思うに違いありません。

 ということで、このブログを見てきて、2音ヴォイシングでもっと他の曲をやってみたい!という人や、2音ヴォイシングって使えるの?怪しい!と思っている人にはぜひ手に取ってもらいたいです。

 さて、今日の本題はビートルズでジャズ!です。

 今更ながら、というかもっと早くに気が付くべきだったのですが、ビートルズの曲って、ほとんどジャズだよね?というものが結構あります。ビートルズの曲は、ディズニー映画の曲と並んで最もよくジャズにアレンジされるのではないかと思います。

 例えば、現代最高のジャズ・ピアニストの1人であるブラッド・メルドー(Brad Mehldau)のThe Art of the TrioのVol.1にはBlackbirdが収録されていますし、ハービー・ハンコックのThe New StandardにはNorwegian Woodがあります。

 もちろん、こうしたアレンジは他にもたくさんあると思います。しかし、オリジナルの曲自体がもうジャズそのものというのも少なくないのです。まあ、もとはR&Bのコピーから始まったバンドなので、ブルース調の曲があっても少しもおかしくないわけですが。

 例えば、Maxwell's Silver HammerWhen I'm Sixty FourBirthdayといった曲を取り上げてみますと、これらの曲のメロディはブルース・スケールでできています。

 原曲は必ずしもジャズやブルースでよく使われるキーではない場合もあるので少しわかりにくいかもしれませんが、移調してみるとハッキリします。

 といって、自分で移調するのは大変!と思う人もいるでしょう。そこでご紹介するのが以下の本です。

Ray Connolly著、The Beatles Complete - Piano/organ Edition

 この本は、ビートルズ(とジョン・レノン)が1962年から1974年の間に発表した曲がほぼすべて、ピアノ・オルガン用にアレンジされて収められています。ただし、原曲とは違うキーに移調されています。右手では1音か2音、左手は2音で演奏するようにアレンジされています。

 例えば、次のような感じです。

 Maxwell's Silver Hammer D → Eb
 When I'm Sixty Four C → Bb
 Birthday A → Bb

 それで、Maxwell's Silver Hammerでは、左手はストライド奏法で演奏するようになっていますので、いっそうジャズっぽく感じます。全部調べたわけではないのですが、多くの曲がジャズでよく使うキーに移調されているようです。

 また、この楽譜ではほぼすべて2音ヴォイシングになっていますので、ビートルズの曲を通じて、ジャズの2音ヴォイシングを練習できるというわけですね! 中級以上の人には簡単すぎるアレンジ楽譜ですが、お勧めです。

 最後に、いくつか注意をお願いします。

 実は最初、自分でビートルズの曲をジャズっぽくアレンジするためにリードシートを探していたところ、この楽譜のコピーをインターネットで見つけました。たぶん、違法コピーですね。ただ、上記のように、すごくいい楽譜だったので、ちゃんとした本で手に入れたいと考えました。

 PDFにはアレンジャーの名前も出ていませんし、表紙の書名も違ったので、探すのに苦労しました。最終的には、楽譜にオルガンのレジストレーション番号が書いてあったことから、おそらくオルガン向け編曲だと目星をつけて検索して、上記の本にたどり着きました。

 まだ届いていないので100%確かではないのですが、いくつかのネット書店の見本とPDFを見比べて、同じ楽譜だと確信しています。ご心配の方は、わたしが実際に手に入れるまで、手を出すのを控えていただければと思います。

 それから、ここで紹介している本のリンクを以下に示していますが、当該のネット書店では在庫していない場合も多いと思います。ところが、他のネット書店ではふつうに手に入る場合が多いので、以下のリンクはあくまでも参考ということにしてください。

2016年5月12日 (木)

ピアノでジャズ!(その5)

 なんちゃってジャズ・ピアノ奏法、第5回目です。本題の前に、最近買った本をご紹介します。

The Real Easy Book: Tunes for Beginning Improvisers

 現在、第3巻まで出ています。それぞれの巻に収録されている曲目は、出版社のサイトなどで確認してみてください。

 内容は、アメリカの中学・高校の吹奏楽バンド(?)で使うために作られたテキストで、基本は、タイトル通りのリードシート(メロディとコード名だけの楽譜)です。が、色々と工夫が施されています。

 まず、ピアノ伴奏のコード・ヴォイシング例が挙げられています。3音ヴォイシングを基本にして、両手、片手の2通りが示されています。簡単なものですが、これが曲に合わせてすぐに使えるようなヴォイシングになっています。

 『はじめてのジャズ・ピアノ・トリオ』にも、曲で使うコードがリードシートの脇に示されていますが、あれは定義的なもので、コードの構成音をただ示しただけのものです。実際の演奏では、自分でコードの転回形を考えたり、音を減らしたり、工夫しないと使えません。その点、こちらの本は実に実践的です。

 他には、コード進行に沿った基本的なベースラインやギターコード、曲中のアドリブで使えるスケール、さらに管楽器がメロディ以外を吹くときの旋律例までも記されています。各パートがここに記されている通りに演奏するだけでも、ちゃんとした曲になるようになっています。まさに至れり尽くせりの本です。非常にお勧めです! 

 さて、今日はジャズとクラシックのことを少し述べたいと思います。

 ジャズ・ピアノをやってみようと思っている方の多くは、経験の差はあれ、クラシックのピアノを学んでいるのではないかと思います。それで、日々クラシックの練習をしつつ、ジャズ・ピアノが弾けたらかっこいいだろうなあ! と思っているのではないでしょうか? (わたしがそうです)

 ここで紹介してきたジャズ・ピアノのなんちゃって奏法では、基本は左手でコード、右手でメロディとアドリブになりますから、実は慣れてくると、曲が単純すぎてだんだんと物足りなくなると思います。

 かといって、ジャズ・ピアニストの演奏を採譜した楽譜ではちょっと難しすぎる。『ブルグミュラー25の練習曲』をやっているか、終了した程度の初中級者はきっとそう思っていると思います。

 そこで、そういう人がスキルアップするために、レパートリーに入れてみたらよいと思われるクラシックの演目をご紹介しようと思います。

 ジャズへの影響という意味では、おそらく筆頭に上がるのがドビュッシーです。ビル・エヴァンスをはじめ、モダン・ジャズのミュージシャンたちはみんな影響を受けていると思います。ベルガマスク組曲「パスピエ」などは、バド・パウエルの曲みたいに聞こえますし。

 他に、フォーレラヴェルメシアンなど、フランスの近現代の作曲家は多かれ少なかれ、ジャズのサウンドに影響を与えていますね。

 なので、これらの作曲家たちのピアノ曲は、ジャズが好きな人なら好きになるでしょうし、練習すればジャズ・ピアノのテクニック向上にも役立ちます。しかし、いかんせん、これらの曲のほとんどが初中級者には難しいです。

 それでも、ドビュッシーの「アラベスク第1番」「亜麻色の髪の乙女」「月の光」などは、ゆっくりじっくり取り組めば、難しいところもあるのですが、まだなんとかなりそうです(ブルグミュラーの「天使の声」から始めてもよいでしょう)。また、「小さな黒人」「ゴリウォーグのケークウォーク」は、ラグタイムというジャズの前身に当たるジャンルに影響を受けた曲で、弾いて楽しく、ジャズの演奏にも役立ちます。

 ラグタイムといえば、映画『スティング』で使われた「Entertainer」を作曲したスコット・ジョプリンが代表的な作曲家です。原曲はオクターブ奏法があったり、難易度はやや高いですが、少し易しくアレンジした楽譜が色々と出ていますので、そこから試してみるといいと思います。

 ラグタイムに特徴的なピアノ奏法は、ストライド奏法というものです。簡単に言えば、左手がベース音とコードを交互に弾いてリズムを取る奏法のことです。たいがい、ベース音はかなり低い音で弾いて、そこから跳躍してコードを押さえる、という奏法になります。

 要するに、ストライド奏法というのは、ワルツの変形なんだなと思ってもらえばよいと思うのです。なので、ワルツの練習もジャズ・ピアノのテクニック向上に有効だと思います。

 では、ワルツの練習はどうすればいいか?ということですが、ずばりショパンをやりましょう! (もちろん、ブルグミュラーの「スティリアの女」もワルツですので、そこから始めてもいいでしょう)。「子犬のワルツ」がとても有名ですね。ショパンといえば上級者向けというイメージがありますが、ワルツについては初中級者でも取り組める程度のものがあります。

 一番やさしいのは、第19番遺作イ短調です。第18番遺作変ホ長調も易しい方です。第9番変イ長調「別れのワルツ」、第10番ロ短調、第3番イ短調などもそうですね。初中級者にとっては曲が長いというのがひとつの問題になりますが、繰り返しも多いですので、じっくり気長にやればいいと思います。

 ショパンの短調のワルツは、あと一歩でジャズ・バラードになるなあ、という感じの曲が多いので、ストライド奏法の練習もかねて取り組んでみてください。あと、上記のワルツと同程度の難易度で取り組める曲が、ショパンのノクターン集にもあります。あの超有名な第2番変ホ長調も、比較的易しい方です。音域の広いアルペジオなどしっかり練習すれば、ジャズ・ピアノにも生かせます。

 フランス近現代のピアノ曲は難しいと書きましたが、例外的に易しいのはエリック・サティです。ドビュッシーの前に取り組んでみてもいいかもしれません。例えば、有名な「ジムノペディ第1番」や「お前が欲しい」はワルツですし、「ピカデリー」という曲はラグタイムですので、上記の曲の前に指(腕?)慣らしするのもいいかもしれませんね。

 それから、バルトーク「ミクロコスモス」は入門段階から取り組めるものですが、練習内容を見ますと、教会旋法やペンタトニックを使った曲がよく出てきます。民族音楽的なリズムだったり、対位法だったり、ジャズ・ピアノでも有効なテクニックも色々学べますし、ぜひレパートリーに取り入れたいものです。

 そして、対位法といえば、やはりバッハですね!

 ジャック・ルーシェ、ジョン・ルイス、オイゲン・キケロ、キース・ジャレットなど、多くのジャズ・ピアニストがバッハに取り組んでいます。ビル・エヴァンスの自宅のピアノの上にはいつも平均律クラヴィーア曲集があったといいますし、バッハはジャズ・ピアニストの必修科目だと思います。

 たとえば、山下洋輔氏はあるインタビューで、バッハをジャズ風に弾くとチャーリー・パーカーみたいなフレーズになると言っています。実際、パーカーはバッハを研究したらしいです。

 また、藤井英一氏のアレンジしたクラシック曲集の中に、バッハの二声インヴェンション第1番があります。メロディはほぼ原曲のままで、左手でジャズ風のコードをつけているのですが、まさにビバップという感じがします。バド・パウエルにはBud on Bachという曲もあります。

 ということで、バッハは重要なわけですが、では何を練習すればいいか? まず「平均律クラヴィーア曲集」ですね。もちろん、フーガは難しいと思いますが、プレリュードには初中級者が取り組めるもので、しかも素晴らしいものが色々あります。

 とはいえ、いきなりでは難しすぎるという人は、「インヴェンションとシンフォニア」がお勧めです! 二声のインヴェンションをやってから三声のシンフォニアに進む、というのが通常のコースかと思いますが、実はこの2つはかなり違うテクニックを要求されるので、同時並行でも大丈夫かと思います。

 インヴェンションでは、左右の手で独立したメロディを弾くので、指の独立をよく訓練することができます。また、テーマを次々と変奏していく感じなので、アドリブの練習にもなりますね。

 インヴェンションで最も易しいのは4番だと思います。1番はわかりやすいですが、難しい部分もあります。8番は最も有名なもので、かつてTVのCMでキース・ジャレットが弾いているのを見たことがあります。残念ながら、録音は発表されていないようですが。。。あと、14番は装飾音とアルペジオの練習ですが、ビバップのアドリブみたいに感じます。13番もです。

 それに対して、シンフォニアでは、片手で二声を同時に弾くために、一部の指が鍵盤を押さえたまま、別の指が動くという音の保持や、中間の声部を左右の手で受け渡しするといったことが学ぶべき重要なテクニックになります。これらは、ジャズ・バラードなどを弾くときなどに役立ちます。

 また、シンフォニアと並行して、シューマン「子供の情景」を練習することをお勧めします。すべての曲が素敵ですし、また上記のシンフォニアで重点的に学ぶテクニックが、もう少し易しく学べます。ベートーヴェンの「月光」第1楽章、「悲愴」第2楽章、ショパンの前奏曲第6番、第15番「雨だれ」、エチュード第3番「別れの曲」も、こうした練習になるでしょう。

 それから、讃美歌もこうした曲の練習に加えると、音の保持などのよい訓練になりますし、ジャズ・バラードの基本はこうしたコラールです(ブルグミュラーでいえば、「アヴェ・マリア」がそれに当たります)。また、セロニアス・モンクは讃美歌のうち、Abide with me (Fast fall the eventide)とBlessed assuranceを録音していますので、ジャズと全く無縁ではないことがわかるでしょう。

 でも、まだ「インヴェンションとシンフォニア」は難しいという人は、バルトークの「ミクロコスモス」やバッハの「アンナ・マグダレーナの音楽帖」「プレ・インヴェンション」などからはじめてみるといいと思います。

 以下に示している楽譜は、参考例であって、最善のエディションではない場合があります。バッハについては、運指やフレージング、強弱などが示されていない原典版が学術的に意味のあるものですが、対位法がはじめての人は運指が詳しい楽譜からはじめるといいと思います。高木版はそうしたものの1つです。

 讃美歌については、「教会福音讃美歌」がお勧めです。新しい曲も色々と入っており、すべての曲にコード名が付されているのもうれしいですね。ジャズ風にアレンジする出発点になると思います。

 

2016年5月 6日 (金)

ピアノでジャズ!(その4)

 みなさんは、GWをいかがお過ごしでしたでしょうか?

 わたしはあまり遠くには出かけず、印象に残っていることといえば、はこだてワインの抽選でたくさんワインをゲットできたことでしょうか? あとは、もっぱら家で溜まったDVDなどを見て過ごしました。

 その1つが「ジョン・コルトレーンの世界」です。実のところ、わたしはそれほどコルトレーンのファンではありませんでした。色々な意味で難しい、というのが原因の1つです。このDVDを見て、なおさらその感を強めることになりました^^;

 ただ、そこでかかっていたImpressionsという曲は覚えました。コルトレーンのCDは「ソウルトレーン」「至上の愛」を含め、5枚ほど持っていたのですが、なぜかImpressionsだけがなかったのです。

 で、この曲ですが、めっちゃ簡単です。キーはCですね。それで、コードはDm7だけです(一度Ebm7に転調しますが、Dm7から半音ずれるだけです)。つまり、CのキーのDドリアン・スケールで演奏されるモード旋法の曲ということになります。要は、アドリブはレの音を中心に白鍵を叩いていればいいということです。

 この曲は、電子ピアノでジャズ・オルガンの音で弾くとサイケデリックな雰囲気が出ますので、ぜひお試しください。

 さて、今日は、ジャズ・ピアノの練習番外編です。これまで、リードシートからすぐに弾ける、なんちゃって奏法を説明してきましたが、アドリブとかをもう少し綺麗に弾くために、ピアの演奏のテクニックを高めるにはどうすればいいか?ということについて書きたいと思います。

 ジャズ・ピアノをやろうという人の多くは、クラシック・ピアノのトレーニングをすでに受けている場合が多いと思います。で、そういう人はハノン、スケール、アルペジオなど、基礎的な練習課題をすでにもっていると思いますので、それを続ければいいと思います。

 一方、ジャズも初めてだけどピアノも初めて、という人はどうすればいいでしょうか? 今日の焦点はこれです。

 すでに過去の記事で触れた中島久恵さんや野呂芳文さんの本は、まさに上記のハノン、スケール、アルペジオをジャズに即した形で練習できるので、それをやるのもいいでしょう。ただ、品切・絶版だったりするので、困りますね。

 これらに代わる本で、まだ手に入る本にはどんなものがあるでしょうか? まず、目につくのは以下の本です。

オスカー・ピーターソンのジャズ・ハノン

 オスカー・ピーターソンの本は、もともと3冊だった本を合本にしたものです。それぞれ予備練習と練習曲の組み合わせになっていて、段階的にジャズ・ピアノのテクニックを学べる本です。ただし、注意が必要な点もあります。練習内容の解説などがあるのは第1部だけで、残りはただ譜面のみです。また、意図的なのか誤植なのかわかりませんが、ところどころ記されている運指が???なところです。かなり無理な運指になっています。最後に、曲にコード名が記されていません。なので、この本は指導する人がそばにいてこそ初めて実力を発揮する本といえるでしょう。

レオ・アルファッシー著、ジャズ・ハノン
レオ・アルファッシー著、ブルース・ハノン

レオ・アルファッシー著、ブギウギ・ハノン

 ジャズ・理論の説明は簡潔ではありますが必要十分にあり、それを読むだけでも勉強になります。説明に沿って練習曲が付いていますが、ハノンというほど簡単(指の練習的)ではありません。曲にはすべてコード名が記されています。指練習よりは曲の練習に近いと思えば、使えると思います。この中では、ブルース・ハノンが一番とっつきやすいと思います。

リー・エヴァンス著、ジャズ96のエチュード

 こちらは、スケール、アルペジオの練習に特化した本です。スケールとアルペジオの練習がピアノのテクニックで最も基本的なものであることは言うまでもないことです。特に初心者にとっては、ジャズで多様される#やbの多い曲に最初とまどいを感じるでしょう。なので、12のキー全調でスケール、アルペジオを練習しておけば安心です! 

 この本では、スケール、アルペジオを長調・短調、そして属七(ドミナント7th)を12のキーで練習します。それぞれの基本的なスケールの提示の後、ジャズ課題というのがあります。それぞれのスケールに応じた8小節程度の練習曲です。最初は、スケールの変奏程度ですが、途中からどんどんジャズらしくなっていきます。ここまで紹介してきた中では、一番のお勧めかもしれません。

 ただ、スケールもアルペジオも初めての人にとっては難しく感じられるかもしれません。スケールやアルペジオの練習はハノンにもありますので、それでまず練習してもいいのですが、以下の本もお勧めです。

根津栄子著、こどものスケール・アルペジオ

 多くの本が、スケールやアルペジオを#やbが少ない順に提示していますが、この本の場合、運指が同じものをグループ化して紹介しています。これがなかなか便利です。

 また、#やbが多い曲は初めて、という人は次の本もお勧めです。

バーナム・ピアノテクニック 全調の練習

 バーナム・ピアノテクニックは、簡単に言えば、ピアノ演奏に必要な様々なテクニック(スケール、アルペジオ、カデンツ、重音、オクターブ、半音階など)を1つひとつに分解して、8小節程度の練習曲にしたものを12曲、1グループにまとめたものです。この1グループを毎日練習するというのが課題です(原題がA dozen a day)。しかも、最初から、クラシックだけでなくポピュラー系のピアノも意識しているような課題になっています。ハノンでは飽きてしまう、という人にはお勧めです。

 ただし、この「全調の練習」は、本家(?)に比べて練習曲的な性格は薄く、むしろ調性の理解に重点があるように思います。なので、本家と併用するのが効果的です。バーナム・ピアノテクニックは全4巻で、段階的にレベルアップしていきます。それで、この「全調の練習」は、レベル的には第2巻と併用するレベルになっています(が、第1巻と併用しても大丈夫です)。

 あと、前に紹介した以下の本も基本的なテクニック練習には向いています(日本語版も出ています)。

Bill Cunliffe著、Jazz Invention for Keyboard

 ここからは練習曲ではなく曲集になります。比較的やさしい曲集を挙げました。基礎練習に飽きたら弾いてみるといいと思います。

チック・コリア著、チルドレンズ・ソングス

 チック・コリアの同名のアルバムの楽譜です。中には難しい曲もありますが、全体的にはわかりやすい楽譜です。がんばれば、ほとんどの曲は弾けるようになると思います。電子ピアノの音で弾くと、いっそうチック・コリアらしくなります。

Thelonious Monk: Easy Piano Solos
Thelonious Monk: Intermediate Piano Solos

 それぞれ初級と中級となっていますが、収録曲が違うだけでレベル的にはほぼ同じです(アレンジャーも同じ人)。セロニアス・モンクの名曲を、比較的やさしく弾けるので、大変重宝しています。ただし、テーマ部分だけです。アドリブはありません。

Thelonious Monk Fake Book

 セロニアス・モンク作曲のほぼ全曲を収録したリード・シートです。一部の曲はピアノ独奏用の2段譜になっています。解説もついて、とてもいい本です。

鈴木まり著、はじめてのガーシュウィン

 ジャズ・スタンダード曲に多く採用されているガーシュウィンの名曲を「ブルグミュラー程度」にアレンジした楽譜です。模範演奏が鈴木まりさんのHPからダウンロードできます。他にも、ガーシュウィンのアレンジ楽譜はありますが、いまのところこれが一番易しいです。

 なお、ガーシュウィン自身によるピアノ・アレンジ「ガーシュウィン・ソングブック」は、全音から出ています。こちらはかなり難しいです。

 他に、前に紹介したキャサリン・ロリンやマーサ・ミアー、ギロックによるジャズ曲集もいいと思います。クラシック・ピアノの教育者によるこれらの楽譜は、典型的なジャズ・フレーズの練習になるだけでなく、運指がちゃんと書いているので、それが勉強になります。

 次回はいよいよバッハについて書きたいと思います。ジャズにとっても重要なので。

2016年4月30日 (土)

ピアノでジャズ!(その3)

 先日に引き続きまして、リードシート(メロディとコード名のみの楽譜)からジャズ・ピアノを演奏する方法です。前回は、2音ヴォイシングという方法を説明しました。

 今回は、それを実際の曲に使ってみよう!ということで、定番中の定番であり、初心者向きとも言われる「枯葉」を例にしたいと思います。

 まず、ジャズの演奏形式ですが、大きな構造としては、イントロ+テーマ+アドリブ+テーマ+エンディングという流れで行うようです。イントロ、エンディングはピアニストが担当ないし、リードするので非常に重要ですが、今回は割愛します。

 それで、テーマとアドリブの部分ですが、ピアノ・トリオのようにピアノ中心の場合、ピアニストが曲のテーマを演奏します。それ以外では、フロント楽器、例えば、サックスがテーマを演奏します。それから、楽器ごとにアドリブを回していき、最後に再びテーマを演奏します。このとき、最初にテーマを演奏した人が再びテーマを弾くことが多いようです。

 それで、ピアノ以外がテーマを弾く場合、ピアニストはコンピング(要するにコードによる伴奏ですね)を行います。このコンピングをどう行うかが、今回の中心テーマになります。

 ピアニスト自身がアドリブする部分は、左手で前回説明した2音ヴォイシングを行い、右手でアドリブすればいいですね。

 それでは、さっそく「枯葉」を例題にやってみましょう。「枯葉」の基本となるコード進行は、次の通りです(Mはmajorの意味)。

 Cm7-F7-BbM7-EbM7-Am7(b5)-D7-Gm7-G7

 まずは、左手のヴォイシングですが、この曲の場合、2音ヴォイシングでもビバップ的なものが合う感じです。カッコ内の数字は指番号です。5-1なら左手の小指と親指ということです。

Cm7   ド  シb  (5ー1)
F7    ファ  ラ  (3-1)
BbM7  シb  ラ  (4-1)
EbM7  ミb  ソ   (3-1)
Am7(b5) ラ  ソ   (5-1)
D7    レ  ファ# (4-2)
Gm7   レ  シb  (4-1) あるいは ソ シb (3-2)
G7    レ  シ   (4-1) あるいは ソ シ  (3-1)

 それで、ピアノが他の楽器が演奏している間にコンピングするときは、どうすればいいでしょうか? その場合は、両手を使ってヴォイシングするのが普通です。それでは、どうやるかですが、例えば、左手で1度と5度、右手で3度と7度を押さえるというのが考えられます。

 でも、ここでは、なんちゃってでもいいから今すぐ弾きたい人(わたしもですが)が簡単にできる、覚えられる方法を使います。まず、左手は先ほどの2音ヴォイシングをそのまま使います。これで覚えることがずいぶん節約できました!

 次は右手です。なるべく左手で押さえていないコード構成音を、3度ないし2度間隔で2音押さえるようにします。そして、コード・チェンジする場合には、なるべく動かす指を少なくします。以下はその例です。

Cm7   ミb  ソ  (2ー4)
F7    ミb  ファ  (2-3)
BbM7  レ  ファ  (1-3)
EbM7  レ  ミb   (2-3)
Am7(b5) ド  ミb   (1-3)
D7    ド  レ   (1-2)
Gm7   レ  ファ  (2-4)
G7    レ  ソ   (2-5)

 それから、最後にバッキング(コードを弾くリズム)についてですが、ビル・エヴァンスのような感じで「タータッター」とバッキングするのがいいと思います。

 例えば、テーマの最初の部分は「ソラシミb」ですが、このミbの部分でまずCm7のコードを「ター」と鳴らします。そして、次の「ファソラレ」のフレーズの直前でCm7-F7と素早く「タッター」とコード・チェンジします。以下、すべて同じです。

 はい、これで「枯葉」の演奏ができますね。さっそくジャム・セッションに参加しましょう! と言いたいところですが、いやいや、こんななんちゃってジャズ・ピアノじゃ、とてもとても敷居が高くて行けませんよ。。。とわたしも思います^^;

 なので、家族や友人といった仲間内だけでひっそりとやりましょう。

 かといって、サックスやトランペットを吹く人が近くにいないとか、そういう人は学生時代に吹奏楽でならしただけあってメッチャうまいので、自分の力量では釣り合わない、ということもあるかもしれません(わたしですね!)。

 そこで、まずは1人でできるマイナスワン音源とのセッションです。ピアノ以外の楽器の演奏が入ったものです。前回紹介した本もそういう音源が提供されています。

 これの難点は、まず自分の力量に合わせたテンポに変えられないということです。次に、ピアノの近くにプレーヤーがないと使えません。また、演奏したい曲をスタートしたらいきなりカウントが始まって曲に入ってしまうという点です。「まだ心の準備が~」みたいことになりかねません。ということで、ある程度実力をつけてからの方が無難なようです。

 そこで、お勧めなのが電子キーボードです。これには色々なリズムを鳴らす機能があります。わたしはカシオのCTK-240というのを持っているのですが、リズムをSwingとかCool jazzなどに設定するとだいたい何の曲でも合います。はじめは♩=90くらいのゆっくり目のテンポにするといいと思います。電子キーボードがいいのは、リズムを鳴らし始めてから、いつでも自分の好きなタイミングで弾き始めることができることです。間違ったら、止めないでそのまままた演奏しなおせばいい。これはとてもいい練習相手になります。

 ただし、難点はドラムの音しかないことです。これにウォーキングベースとか、ベースラインが付けば、1人でピアノ・トリオの練習ができるのですが(もちろん、シーケンサーとかもっと高級な機器を導入すればできますね)。あと、他の楽器の演奏に合わせてのコンピングの練習ができないことも問題ですね。

 そこで、登場するのが、小学生時代に習ったリコーダー鍵盤ハーモニカ(ピアニカ)です。リコーダーをフルート、クラリネットの代わりに、鍵盤ハーモニカをサックス代わりに使います。家族や友人の誰かにテーマだけでも吹いてもらえば、コンピングの練習ができます。

 リコーダーは、ソプラノにせよアルトにせよ、結構難しいので、鍵盤ハーモニカが今一番のお気に入りです。音がリコーダーよりもサックスに近いですし、鍵盤で音を出せるので楽です。妻も少しピアノをやるので、交代でやっています。

 ということで、皆さんもお試しください。


 

2016年4月27日 (水)

ピアノでジャズ!(その2)

 お久しぶりです。ずいぶんこのブログも更新しなくなっていました。書きたいことは色々とあったのですが、つい怠けてしまっていました。

 今日は、ジャズ・ピアノのトレーニングについて、もう少し書いておきます。前回は、かなり初歩的な練習を中心に述べました。本日は、いよいよリード・シート(メロディとコードネームだけの楽譜)から弾くことについてお話します。

 といっても、あくまでも初心者のわたしの方法ですので、間違いなどがあるかもしれません。その点はご注意ください。ピアノのテクニック面でいえば、「ブルグミュラー25の練習曲」程度をやっているか、終了した程度の方を前提とします(わたしはバッハの「インヴェンションとシンフォニア」を何曲かやっているところ)。あと、基本的な楽典は理解できているとします。

 さて、リード・シートをもとにしてジャズ・ピアノを弾こうとしたとき、2つのことをクリアしなければなりません。(1)コードをどう押さえるか(ヴォイシング)、(2)アドリブはどうやってやるのか、です。

 まず、(1)のヴォイシングから。

 教則本を見ますと、ダイアトニック・コードがどうしたこうしたとか、色々と説明されています。もちろん、これらをきちんと勉強することは非常に大事です。ですが、とりあえず今、なんちゃってでもいいからすぐ弾きたい! という人のために、一番簡単なものだけ説明します。

 それは、「ルートなし2音ヴォイシング」というものです。要は、弾こうと思っているコードの3度と7度の2音だけを押さえるのです(ルートは、ベーシストが押さえてくれている)。

 例えば、Cmaj7ですと、コードの構成音はド・ミ・ソ・シなので、ミとシだけを押さえるというわけです。7thが入っているので、これだけでも結構ジャジーな感じがすると思います。

 そして、コード・チェンジですが、なるべく指を大きく動かさなくてよいように工夫します。ジャズでは頻繁に現れるツー・ファイブ・ワン(II-V-I)というコード進行を例にしてみます。ツー・ファイブ・ワンというのは、簡単に言えば、ダイアトニック・コードの2番目、5番目、1番目を順に弾くということです。Cmaj7ですと、Dm7-G7-Cmaj7ということになります。

 Dm7のコードの構成音はレ・ファ・ラ・ド、G7のコードの構成音はソ・シ・レ・ファです。なので、Dm7ではファとド、G7ではシとファを押さえればいいわけです。しかし、ここで2つのコードでファが共通なことに気づきます。

 なので、Dm7のときは左手の親指でド、小指でファを押さえ、G7に変わるときは、親指だけ1音左に寄せてシを押さえればいいことになります。そして、最後にCmaj7に移る際にはG7の押さえ方のまま、小指だけ1音左にずらしてミを押さえればいいのです。

Dm7  ファ  ド
G7   ファ  シ
Cmaj7 ミ   シ

 次に、応用として、ビバップ時代のピアニストたちがよく使っていたとされている2音ヴォイシングを説明します。この場合、コード構成音の1度(ルート)と7度、1度と3度を交互に弾きます。再び、Cmaj7のツー・ファイブ・ワンを例にしますと、次のようになります。

Dm7  レ  ド (1度と7度)
G7   ソ  シ (1度と3度)
Cmaj7 ド  シ (1度と7度)

 この場合も、なるべく指を大きく動かさないように運指を工夫します。まず、Dm7では左手の親指でド、小指でレを押さえます。次に、G7のとき、親指を1音左に動かしてシ、中指でソを押さえます。最後に、Cmaj7では、親指でシ、小指でドを押さえます。Dm7からG7に変わるとき、開いていた指をいっきにしぼませる動きになるので、少し練習が必要になるかもしれません。

 以上の2種類の2音ヴォイシングを覚えれば、簡単に多くの曲が弾けるようになります。

 わたしがこの2音ヴォイシングを知ったのは、次の教則本を練習していた時です。この中の練習曲で結構、このヴォイシングが用いられていて、ああ、これでいいんだ!と気づかされました。

Bill Cunliffe著、Jazz Invention for Keyboard (日本語版がATNから出版されています)

 これは素晴らしい名著で、理論は少しずつ紹介しつつ、予備練習と練習曲をとにかく弾いていくことで理論とテクニックを学ばせようというものです。どの曲も比較的短く、かつジャズ・テイストにあふれているので、練習していて楽しいです。付録のCDの演奏も素晴らしく、左側の音を消せばマイナス・ワン(ピアノ抜きの演奏)になるのも便利です。

 Bill Cunliffeさんは他にもう少し初心者向きの教則本も書いています。

Bill Cunliffe著、Jazz Keyboard Toolbox

 曲数は少ないですが、それが逆に最後までやり通そうという気にさせてくれます。この本では、同じ曲を最初は2音ヴォイシング、次に3音ヴォイシングで練習するようになっていて、段階的に効果的に学ぶことができます。また、練習曲も(オリジナル曲ですが)ブルース、ビバップ、(コルトレーン風)マイナー・ブルース、(ハービー・ハンコック風)モード旋法、ラテンなど色々なスタイルを学べます。こちらもCD付きです。

佐藤史郎著、かんたん入門ジャズ・ピアノ奏法

 これも参考になる本です。リズム、アドリブ、ヴォイシングの基礎を「かえるの歌」をジャズ風にアレンジすることを題材に、簡潔丁寧に説明してくれています。この本にも2音ヴォイシングのことが書かれています。巻末には、Blue Monkと枯葉のアドリブまで含めた採譜(レコードから音を拾って楽譜にしたもの)まであります。

John Valerio著、Bebop Jazz Piano(日本語版がATNから出版されています)

 こちらには、ビバップ期の2音ヴォイシングが説明されている箇所があります。バド・パウエルやセロニアス・モンクといったビバップ期の演奏法を色々学べて便利です。

 他にもあると思いますが、現在わたしがもっている教則本で2音ヴォイシングについて触れているのは以上です。さっそくみなさんも試してみてください。

 さて、次はいよいよ(2)アドリブです。

 アドリブの練習法ですが、まずはCDをたくさん聴くこと、これに尽きます! これは確かに真理です。わたしも学生時代から、マイルス・デイビス、チャーリー・パーカー、ビル・エヴァンス、セロニアス・モンク、ジョン・コルトレーン、チャーリー・ミンガス、ハービー・ハンコック、キース・ジャレット、チック・コリアなどなど、楽器を問わず定番のCDをたくさん買っては聴いてきました。自然とフレーズが鼻歌で出てくるくらい聞き込む、それが最善のアドリブ習得法だと思います。

 でも、教則本を見ると、スケールがどうのこうのとか書いてあって、理論をいっぱい勉強しないといけない上に、コード変化を聴き分ける耳が良くないといけないんじゃないですか? という疑問の声も聞こえてきそうです。わたしもそうでした!

 そこで、とりあえず、なんちゃってでもいいので、ジャズっぽいアドリブができるようになりたいという人に、とっておきの方法を説明します。

 まず、結論を述べます。(1)ブルースをブルーノート・スケール一本でアドリブ、(2)メジャー・スケールのドリアン・モード一本でアドリブ、以上です。

 どちらにも共通していることは、曲中のコード変化に関係なく、1つのスケール上でアドリブすればいい、という点です。なので、各スケールを12のキーで弾けるようになりさえすればOKということになります。

 まず、ブルースですが、最も基本となるコード進行は、以下の12小節のようになります(多くの曲では、後半をツー・ファイブにしたりして変化を入れます)。

I-IV-I-I
IV-IV-I-I
V-V-I-I

 コードは普通ドミナント7thですので、よく弾かれるFのキーではこうなります。コードが3つなので覚えやすいですね。

F7-Bb7-F7-F7
Bb7-Bb7-F7-F7
C7-C7-F7-F7

 それで、左手ではこのコード進行に従って2音ヴォイシングで演奏しつつ、右手ではブルーノート・スケール(ブルース・スケール)上でアドリブします。

 ブルーノート・スケールというのは、メジャー・スケールで3度、5度、7度の音を半音下げたものになります(正確には、これはメジャー・ブルース・スケールと言われます)。普通は、2度と6度の音を省き、5度を足したものを使います。Fのキーですと、

 ファ(1度)、ラb(3度b)、シb(4度)、ドb(5度b)、ド(5度)、ミ(7度)

になります。まずは、これらの音を下から上へ、上から下へと順番に弾いてみてください。とってもブルージーなジャズの音に聞こえますね! 

 このスケールで少し遊んでみると、有名なジャズの曲とよく似たフレーズが自然にでてくることに気づくと思います。試しに、ジャズ・スタンダード集を繙いてみると、ブルースの名曲がたくさんありますが、そのメロディを弾いてみると、ブルーノート・スケールをいったりきたりしているだけ、と感じる曲も多いです。

 ということで、まずはブルースの曲をブルーノート・スケールでアドリブしてみましょう。最初は、スケールを上昇・下降するだけでもいいです。アルペジオ風に1音飛ばしで弾いてもいいです。だいたいどんな弾き方をしても、なんかそれっぽく聞こえます。

 少し慣れて来たら、CDをよく聞いて、そこで弾かれているアドリブの一部だけでも耳コピーしてみましょう。Cool Struttin'、Now the time、Bag's Groove、C Jam Blues, Blue Monkなどが有名なブルースの曲です(かつ、比較的弾きやすい)。CDから採譜された楽譜もありますので、色々と試してみてください。

 ブルースのアドリブについてもっと知りたいという人は以下の本などを参考にするといいと思います。

貴峰啓之著、やさしいブルースアドリブ入門

D.Greenblatt著、ジャズインプロヴィゼイションのための必須ツール ブルーススケール

 さて、ブルースについてはブルーノート・スケールでいいとして、他の曲はどうすればいいの? ということになりますね(わたしもそうでした)。そんなわたしに、メジャー・スケールのドリアン・モード一本でいいんだよ、と教えてくれたのが以下の本です。

友寄隆哉著、禁断のジャズ理論

 ジャズの世界でモード旋法を導入したのがマイルス・デイビスのKind of Blueというアルバムです。この中のso whatという曲は、なんと基本的には1つのコードだけで全曲弾かれています(途中で一度、転調がありますが)。ハービー・ハンコックの楽譜などを見ても、ずっと1つのコードで何小節も行く箇所があります。いわゆるso whatコードというものですが、ここでアドリブに使われるのがドリアン・スケールです。

 Cmaj7でいうと、ドリアン・スケールは2度の音、つまりレから始めてレ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・レという音階になります。

 さて、左手はCmaj7のままで、ドリアン・スケールでアドリブをしてみましょう。要は、白鍵をずっと弾いていればいいということですね! 

 このとき、左手のヴォイシングは、4音ヴォイシング、つまり、ド・ミ・ソ・シを全部押さえる方がかっこいいと思います。そして、電子ピアノやキーボードの場合は、音色を電子ピアノに変えてみてください。すると、なんだかチック・コリアやハービー・ハンコックの音楽のように聞こえます。

 先ほど触れたBill Cunliffe著のJazz Keyboard Toolboxにはこのタイプの曲の練習が含まれています。あと、このタイプの有名な曲は、so whatの他、impressions, 処女航海などがありますね。

 本当にドリアン・スケールだけでいいの? と疑問に思われる人は、上記の本を読んでみてください。so whatのような曲でなくても、コード進行から外れる音を思わず弾いてしまう確率はかなり低いことが説明されています。

 とはいえ、やはりこれで大丈夫なのかなあ?と感じる人もいると思います。その場合、部分的に応用するといいと思います。

 例えば、ツー・ファイブ・ワンのコード進行の場合、主コードに対するドリアン・スケールを弾き続けるというのは理論的に何の問題もありません。Cmaj7だと、Dm7-G7-Cmaj7を弾いている間、Dドリアン・スケールだけを弾くということです。それぞれのコードトーンが何かとかを考えなくてもよいので便利ですね。

 これより進んだことをしようと思ったら、テンションとか色々と勉強しないといけませんね。でも、とりあえずここに書いたことだけでもすぐに演奏してみて試したいという人は、さっそくリードシート集を買いましょう。

 次の本は、冒頭にかなり詳しくアドリブの作り方などが書いてあり、曲ごとの解説も(この手の本にしては)詳しいので、はじめの1冊としてお勧めです。

富塚章著、はじめてのジャズ セッションで困らないための必修スタンダード50曲

 解説は上の本ほど詳しくはなく、曲数も少ないですが、こちらもいい本です。

宮前幸弘著、はじめてのジャズピアノトリオ

 もちろん、最初から本格的にやりたい人は、以下を手に入れるべきです。

納浩一著、ジャズ・スタンダード・バイブル

 最後に、ジャズ・ピアノの勉強を続けていく上で欠かせない教科書を挙げておきます。

マーク・レヴィン著、ザジャズピアノブック

 これはまさにバイブルです。知りたいことがすべて書いてある。かといって、難しい理論書かというとそうでもなく、段階的にジャズ・ピアノのための理論とテクニックを、譜例や練習曲を交えながらわかりやすく解説してくれています。(すべてはすぐに理解できないにせよ)初心者から使える名著です。Must buyです。

2016年2月 6日 (土)

ピアノでジャズ!

 またまたピアノの話です。

 前回ご説明したトレーニングは今も毎日続けています。ですが、わたしが本当にやりたいのは、やはりバッハのフーガと、そしてジャズ(ゴスペル)なのです。

 バッハについては近くもっと詳しいことを書きたいのですが、今日はジャズのことです。

 いまのわたしのピアノのレベルは、だいたい初中級(全音の楽譜でいえば、★★★くらい)だと思います。そういう初心者にとって、ジャズ・ピアノというのは非常に敷居が高いもの。

 とはいえ、最近は「やさしく弾ける」「これなら弾ける」「大人の」といった様々なジャズ・ピアノ教本が出ていて、わたしもいくつか持っています。これらの本は、比較的やさしいところから少しずつジャズの理論も織り交ぜつつ、最後の辺りは結構難しくなってしまいます。

 何より不満なのは、同じレベルで違う曲を練習したいのにできない、というところだと思います。つまり、1冊の中での曲のレベルの変化が急すぎるということです。あきっぽい性格のわたしは、同じ曲をしばらく練習したら、次の曲をやりたくなるのですが、上記のような本ではそれが難しいわけです。

 それで色々と探してみると、ちゃんとそういう要望に応える楽譜があります。それは、キャサリン・ロリンさんの『ジャズ!ジャズ!ジャズ!』『ジャズ・キャット』です。それぞれの曲は、ある特定のジャズのフレーズ1つを基本形にしてそれを繰り返しているので、だいたいどの曲もブルグミュラーをやっている人なら初見でも弾けそうなくらいです。そして、どの曲も聞いた人が誰でも「わあ、ジャズだ!」とすぐわかる、楽しい曲集です。

 とはいえ、左右の手の独立をしっかりと求めてきます。『ジャズ!ジャズ!ジャズ!』の最初の2曲はとても簡単ですが、3曲目の「ぬき足さし足しのび足」から少し難しくなります。左手はウォーキングベースで、音階を43212121という指使いで弾きつつ、右手は三和音を左手の2拍目ごとに鳴らします。これが簡単そうで、ちょっと難しいです。

 まず、左手は指が行ったり来たり前後しつつ、右手は裏拍で鳴らすので、右手のタイミングに気を取られていると左手がもつれますし、左手に気を取られていると右手のタイミングを外します。

(これよりずっと難しいですが、ショパンの「24の前奏曲」第3番も、こんな感じですね)

 なので、左右の手が独立して動くように、片手ずつしっかり練習して、特に左手は自動的に動くくらいにしないといけませんね。

 そんな感じで、譜面上はブルグミュラーよりやさしいくらいだと思いますが、実際の演奏ではブルグミュラーを終えた人でも難しいと感じる部分もあると思います。それはちょうど、ブルグミュラーを終えた人でも『プレ・インヴェンション』のようなポリフォニーは苦手という場合と似ていると思います。

 これらの楽譜と同程度(か、それより易しいレベル)の難易度のものとしては、グレンダ・オースティンさんの『ギロックとグレンダのやさしいピアノ曲集 もっとリズムを楽しもう!』があります。これは、最初の6曲以降は、ギロックの中級レベルのジャズ曲集『ジャズスタイル・ピアノ曲集』をやさしく編曲したものになっています。これをマスターした後に、ギロックのオリジナルにアタックするという楽しみがありますね。

 マーサー・ミアーさんの『ピアノジャズ・タイム』は、初級レベルから中級の上くらいまでを対象として、段階的にレベルアップしていく全5巻のジャズ曲集のうち、最初の3巻を1冊にした日本版です。これも、上記の楽譜と同様に、レベルが急に変化することがないので、たっぷりとジャズを楽しむことができます。ただし、後半は上記の楽譜よりも若干レベルが上がります。原著では模範演奏CDが付いた版があり、各巻1200円くらいですので、そちらでそろえるのもありかと思います。

 さて、これらの楽譜で、初級レベルからジャズ・ピアノを楽しむことができますが、人によっては少し不満に思う点もあると思います。

 第1に、これらはどれもオリジナルの曲だということです。どの曲もジャズ・テイスト満載なのですが、やはりみんながよく知っているスタンダード・ナンバーを弾きたいという人には向いていません。

 第2に、これらの楽譜には、使っているコードとかコードの構成音といった理論がまったく説明されていないので、これらの曲集をマスターしても、他に応用できないかもしれない、という点です。

 それで、将来スタンダード・ナンバーをリード・シート(メロディとコードのみの楽譜)で弾けるようになりたい人は(わたしもです)、他の教本を探す必要があります。

 よい本は色々ありますが、今のところ一番良さそうなものを2つ挙げておきます。中島久恵さんの『ジャズピアノテクニカルメソッド ジャズの練習』と、野呂芳文さんの『ジャズピアノの練習法を教えます』です。わたしもいまこれで練習しています。

 実は、両方とも内容的にはほぼ同じです。中島久恵さんの方が練習曲の数が多い点と、野呂芳文さんの方には(後半の部分の)模範演奏CDが付いている点が違います。

 はじめにウォームアップも兼ねた指練習のための練習曲があります。ハノンを思い浮かべてもらえばよいでしょう。ただし、長調(ないし)単調の全12調を練習します。1,2小節ごとに調が変わっていきます。この辺り、ピシュナ(リトル・ピシュナ)と似ています。

 次に、基本コード(三和音、四和音)のスケール、カデンツ、アルペジオの練習です。やはり、長調(ないし)単調の全12調を練習します。

 以下、テンション・コードとか、ジャズ特有のコードや旋法(モード)の音階などの練習、そして、コード進行の組み立てやアドリブのための練習と続きます。

 これらのことは、もちろんジャズの理論書にも書いていることなのですが、これらの楽譜では解説は必要最低限で、基本は指で弾いて覚えるという姿勢になっています。中島久恵さんも書いていますが、弾いているだけでジャズ・ピアノがマスターできる、そんな気分にさせてくれる本です。どちらもお勧めです。

 おそらく、この次の段階としては、アドリブ・フレーズ集などで、さらに高度なテクニックをマスターしていけば、リード・シートから自由自在に演奏できそうですね!


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2016年1月26日 (火)

ピアノ、始めした! (その3)

 さて、ピアノ練習の目標はバッハとなりました。20年越しの悲願である平均律のフーガが弾けるようになるまでがんばりたいと思います。

 その手始めとして、2声のインヴェンションの第1番を暗譜できるまで弾いてみました。以前はここで終わったしまったのですが、今回は第4番も弾けるようになりました。バッハ自身が難易度順を示していて、第1番の次に易しいのがこの第4番だったのです。

 それで、続いて第7番、第8番。。。と進めていってもよかったのですが、ここで3声のシンフォニアに移りました。だいぶ指が動くようになってきて、どれくらい目標に近づいているのか確かめてみようとも思いましたし、2声と3声とでは全然違うから、インヴェンション15曲をすべてやってからでなくても取り組めるという意見もあったからです。

 ということで、3声のシンフォニアですが、これについては15曲中どれが一番易しいのか、色々と違う意見があるようです。そうした意見を総合すると、フーガ的ではない第5番や第15番、フーガ的な中では第6番が易しいようです。

 そこで、わたしは第6番から始めました。楽譜の問題とか色々あったのですが、これも暗譜して最初から最後まで弾けるようになりました。さらに、3声のシンフォニアでは一番好きな第7番も弾けるようになりました。

 これらバッハの習得に関しては改めて詳しい記事を書こうと思います。

 ここまできて、あとはひたすら2声と3声をやっていけばいいとも思ったのですが、それではバッハしか弾けない人になってしまうのでは? という不安もありました。

 そこで、多くの人が通過する練習曲などもやってみようと思いました。しかし、そのために大好きなバッハの練習時間がなくなる、という本末転倒なことはやりたくありません。

 ということで、比較的易し目のところから、時間を決めて取り組むことにしました。以下が、現在のわたしの日課です。

第1セット

・ハノン(約10分間)

指練習。
1オクターブだけやります。1日に1曲ずつ追加していきます。つまり、第1日目は第1番、第2日目は第1番と第2番。。。という感じです。とりあえず、第1部の第20番までをやります。第20番まで来たら、20曲通し練習を繰り返します。

・ツェル二―(約20分間)

古典派の基礎テクニック。
まずは、ツェル二―百番練習曲の抜粋をやります。具体的には、『チェルニー やさしい20の練習曲 「30番練習曲集」の前に』『こどものツェルニー100番 効果的な24曲でしっかり身につくテクニック』から、それぞれ1曲ずつを同時にやります。つまり、1日に2曲練習します(各10分くらい)。これらは5日間続けて練習したら、次の曲にいきます。

第2セット

バーナム・ピアノ・テクニック(約10分間)
ポピュラー系も視野に入れた総合練習。
上の第1セットの曲集では身につかないテクニックをこれで学びます。1日分としてごく短い12曲がセットになっているので、1日分を全部やります。これも同じセットを5日間続けて練習したら、次に進みます。

とりあえず、第1巻、第2巻、全調の練習、第3巻までを予定しています。余裕があれば、第4巻までやります。

・ブルグミュラー25の練習曲(約20分間)
古典派・ロマン派の基礎練習。
テキストは、解説・分析が詳しい六道礼子さん編集のものです。1日に1曲練習します。これも同じ曲を5日間続けて練習したら、次の曲にいきます。

以上、合計で約1時間の基礎練習です。このトレーニングを始めて、現在10日目です。だんだん習慣になってきました。

上記のトレーニング・メニューが終わるのが約4か月後になります。その後は、さらに上のレベルの練習曲に進みます。

ツェル二―については、ツェル二―30番練習曲に進みます。テキストは『チェルニー30番 30の小さな物語』(上・下)を使う予定。難易度順に整理されていて、簡単なアナリーゼもされている楽譜です。

ブルグミュラーの後には、ソナチネ・アルバムを抜粋でやります。ハノンは、さらに20番以降をやるか、リトル・ピシュナに移るかします。バーナムの後は、『ル・クーペ ピアノの練習ABC(アルファベット)』か『あきない!ハノン』をやると思います。

2016年1月 6日 (水)

ピアノ、始めした! (その2)

 昨日の続きです。

 ピアノを再開しようと決め、さっそく買ってきたオペラ・アリアの楽譜を開いてみる。見た目、それほど難しくなさそう。

 しかし! 全然指が動かない、特に左手。

 ギターは今でもよく弾くので、左手はギターコードを押さえたりして頻繁に使っているはずなんですが、やはりピアノ用とは違う筋肉を使っているのでしょうか?

 それでまず、もう少し易しい楽譜探しをしました。探してみると、クラシックの名曲集といった楽譜の中に、易しくアレンジしたものがいくつかありました。その中から、オペラ・アリアが多く掲載されているものを買ってきました。

 さすがにこれは簡単です。なまっていた指でもちゃんと弾けます。

 でも、なにか物足りない。妻も、「あ、これ、わたし弾きたかった曲なんだよね~」と弾き始めますが、「なんか、音が少ない気がする」。もちろん、聴いている限りは、あの名曲のメロディーなのですが、なんだか指がさびしい感じがするのです。

 ここが音楽(や、その他の芸術)の面白いところで、鑑賞者として聴いている(見ている)と素敵(上手い)と思えるものが、実践者からみるとショボい、ということがあるのです。

 もちろん、アレンジャーさんは、初心者でも名曲の感触をつかんでもらえるようにと大変な努力をされているので、これは楽譜の問題ではなく、ただ自分たちのレベルに合っていないということですね。

 だいたい、こうした技能というのは、自分のレベルよりもほんの少し上(でも、上過ぎない)をターゲットにするのが上達のコツかと思います。

 とはいえ、ちょうどいいものがなかなか見つからないものです。だいたい、クラシックの名曲集というのは、上の楽譜のように極端に易しくアレンジしたものか、比較的易し目の原曲を集めたものが多く、この時点のわたしのレベルはちょうどその中間だったのです。

 ということで、逆転の発想というか、正攻法ですが、楽譜探しはそれくらいにして、自分のレベルを後者のレベルにもっていけばいい! ということなりました。つまり、練習曲です。

 では、どういう練習曲にするか?

 妻は「やっぱり、ハノンじゃない?」と、自分の使い古した楽譜を持ちだしてくる。う~ん、やりたくない。

 これまで見たことがなかったけど、やはり「ツェルニ―百番」か? 100曲もできないなあ、と思ったら最近は抜粋したものも色々あります。

 また、最近はインターネットで色々な情報があるので参考になります。初心者から始められるもので評判の良いのは、例えば、「バーナム・ピアノ・メカニック」や「ルクーペ ピアノのABC(アルファベット)」。

 そして、「リトル・ピシュナ」。ああ、これだ!と思いました。バッハやシューマン、ショパンといった曲でよく出てきそうな指のトレーニングができそう。これに決めた!

 ということで、指のトレーニングは「リトル・ピシュナ」を使うことにしました。と同時に、「ツェルニ―百番」の抜粋集もやることにしました。いずれも、動かなくなっていた左手の薬指、小指を鍛えてくれます。

 この頃には、オペラ・アリアのことはどうでもよくなりかけていました。むしろ、「リトル・ピシュナ」をやりながら、バッハ弾きたいなあ~という気持ちが蘇ってきたのです。

 それで、昔買った楽譜を取り出してきました。そこからまた波乱が生じるのですが、そこは次回に書きます。

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2016年1月 5日 (火)

ピアノ、始めました!

 昨年暮れから、45歳にしてピアノを始めました。厳密にいうと、再開ということになると思います。

 まず、きっかけですが、ここ数年、オペラにはまっているということは、読者の皆様もご存知かと思います。それで、何事も見るだけでは我慢できない性分ですので、オペラ・アリアでも歌えるようになろうかな?と思ったのです。

 それで、ピアノ伴奏がついた楽譜を買ってきたのですが、自分で伴奏しながら歌えたら素敵だろうなあ!と思ったのです。それで、ピアノを始めました。

 幸い、家には立派な電子ピアノがあります。妻が実家に置いていたアップライト・ピアノを、結婚を機に引っ越しするにあたって、消音のことも考え、当時出たばかりのカワイの電子ピアノに買い替えました。木製鍵盤で、本物のピアノに近い打鍵感覚があるというものです。

 これからわかるように、妻はピアノを習っていました。教会で讃美歌の伴奏をするための練習がきっかけだったようです(わたしと出会う前からやっていました)。とはいえ、妻も大人になってから始めたので、レベル的に言うと、ブルグミュラー25番を終わった後くらいです。チェルニーとかバッハはやっていません。

 さて、わたしの話に戻ります。

 小学生時代から、音痴な上、指先が器用ではないので、音楽の時間は毎回苦痛でした。合唱では口パク、合奏ではみんなにどんどん置いていかれて、あげくエア・リコーダー、エア・ピアニカ。

 これが高校まで続きます。高校では芸術科目が必修だったので、一番荷物が軽い(教科書だけでいい)音楽を選んだのです。高校ではギターが入ってきたのですが、もちろん、これもダメ。調弦からしてできない。

 それが、大学生になって、学生寮に入ると、周りにはロックな先輩たちがいて、ついにギターに開眼! きっかけは、同じ女子大の女の子とつきあっていた先輩が、自分とほぼ同じ時期にフラれてしまい、「もう女はこりごり、これからはロックだぜ!」みたいなノリで、一緒にエレキ・ギターを始めることになったのです。

 やさしい(?)先輩たちに教えてもらいながら、初めはビートルズとかチェッペリンのやさしい曲やフレーズの一部を弾いたりしていました。

 それから、妻と出会って、フォークギターも始めました。妻は、高校時代はギター部でクラシック・ギターをやっていて、兄の影響でフォークギターもやっていたのです。それで、スリー・フィンガーとか、フォークの演奏法を教えてもらいました。わたしはもっぱら、ブルースハープを首にかけながら、ボブ・ディラン、PP&M、S&M、吉田拓郎などを好んで弾き語りしていました(あいかわらず音痴でしたが)。

 当時、同じ寮に住んでいた友人にモーツアルト狂いの奴がいました。CDはモーツアルトばかりで、演奏法は独学でマスターしたらしいですが、部屋に遊びにいくと、いつもキーボードでモーツアルトのパッセージを弾きながら、「これ、いいでしょう?」と、わたしもモーツアルトに洗脳しようとするのです^^;

 そんな彼に、わたしは「モーツアルトの音楽は耳に心地よいだけで、魂がこもっていない!」といった感じで、かたくなに拒否していました。実際、プロテスト・ソングを歌っていたロックなわたしにとって、ロココの宮廷音楽家モーツアルトは心に響かなかったのです。

 いつもそんなやりとりをしていたのですが、ある時彼がたわむれに「じゃあ、これはどう?」と弾いてみた曲がありました。「あれ? これはモーツアルトらしくない曲だねえ」などとコメントすると、「あ、わかる? これはね、バッハの平均律クラヴィーア曲集なんだよね。第1番のプレリュード。グノーのアヴェ・マリアの元になった曲」と教えてくれました。

 その日、なぜかその音楽が耳に残り、バイトに行く途中で平均律クラヴィーア曲集のCDを買ってしまったのです! 全盲のオルガニスト、ヘルムート・ヴァルヒャ演奏のものです。

 バイトから帰り、おもむろにCDをかけてみます。彼が弾いてくれた第1番のプレリュード。チェンバロの演奏でもやっぱりいい曲。そして、その後です。第1番フーガ。あれ? これって多重録音? それとも2,3人で弾いてるの? そんな驚きをよそに、第2番プレリュード。トッカータのような激しい音楽。そして、レクイエムのような第2番フーガ。

 このときには完全にバッハの濃密な音楽に圧倒されていました。やっぱり、これは全部1人で弾いているんだよな? その音楽の秘密を知りたくて、翌日には楽譜を買い求めていました。

 弾いてみたい。

 もちろん、手元にはキーボードもありません。でも、兄が高校時代に少しだけ、プログレッシブ・ロックのバンドをやっていて、キーボードを持っていたので、実家から送ってもらうことにしました。

 学生時代、音楽の授業で実技は全然ダメでしたが、楽典はきちんとマスターしていたので、楽譜は読めました。が、平均律の壁は厚そうです。

 それで、キーボードが届くの待っている間に、ピアノを基礎から勉強しようと思いました。それで、まずはバイエルを買ってきました(20年以上前なので、これが定番の入門)。つまんないと思いながら、日数をかけてかなり最後の方まで弾きました。よくわからないところは妻に教えてもらいました。

 それからいざ平均律に取り組みました。第1番プレリュードはなんとか弾けました。感動です。でも、フーガには手が出ません。

 インターネットのない時代で、ピアノ教室に行っていないので多少苦労しましたが、調べてみると、インベンションとシンフォニアという、もっと易しい曲集があることを発見します。それで、また楽譜を買ってきて、2声のインヴェンション第1番の練習を始めます。バイエルと違って難しい! でも、楽しい。

 こうしてなんとかインヴェンション第1番が弾けるようになったのですが、第2番がまた難しいカノン形式の曲。結局、当時はここで挫折してしまいました。

 結婚して、引っ越しして、大学に職を得るために研究に没頭して、いつしかピアノは弾かなくなりました。 

 それから20年以上。ついに、再びピアノの前に戻ってきました。




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StrateGemsにチェス・プロブレム2作掲載!

 みなさま、新年明けましておめでとうございます。

 さて、昨日、アメリカで発行されているチェス・プロブレム専門誌StrateGemsのJanuary-March 2016号(SG73)が届きまして、そこにわたしの投稿したプロブレムが2作掲載されていますので、ご報告します。

 1つ目は2手メイトです。ある有名なテーマが盛り込まれています。

01

 投稿したのはずいぶん前です。古いテーマですが、なるほどこれは今まで見たことのない手順だということで掲載が決まりました。

 今回、担当編集者のRosnerさんは「前号でのわたしの記事が参考になったかもしれない」とコメントしていますが、本当は順序が逆ですね。

 わたしの作品を掲載することになって、それが古いテーマであるゆえに、新規性とかを疑われないように、実はこのテーマは今でも新しい発見があるんですよ!というアピールをするために(それだけではないでしょうが)、Rosnerさんは前号に記事を書いたのだと思います(その記事自体はとても参考になるよいものです)。

 まあ、そういう大人の事情があったというわけです。

 もう1つは3手メイトです。

02

 これはもっと前に投稿したものですが、上の2手メイトと多少関係があります。

 最近はある事情でちょっと創作をさぼっているので、そろそろ掲載作のストックもなくなりつつありますので、がんばって投稿しないといけませんね^^;


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2015年12月 7日 (月)

Die Schwalbeにヘルプメイト掲載!

 本日帰宅したら、ドイツで発行されている老舗のチェス・プロブレム雑誌Die Schwalbeに、わたしが創作したヘルプ・メイト問題が掲載されていました。

 以下がその問題です。

Schwalbe

 h#2,5というのは、2.5手でヘルプ・メイトという意味です。つまり、白・黒・白・黒・白で黒キングがメイトされるということです(ヘルプ・メイトでは、黒から指し始めるのが通常なので、白が第1手を指した分が半手ということになります)。

 この問題には3つの解があります。投稿時には2つの解しかなかったのですが、担当者さんのアドバイスで3つの解に変更しました。

 担当者のSilvio Baierさんは、本業は物理学者のようですね。チェス・プロブレムでは、レトロ分野で活躍しています。

 ちなみに、問題図のわたしの名前の下にあるJ-Nanaeですが、Jは日本、Nanaeはわたしが住む町の名前(七飯)です。北海道でいいじゃないかな?とも思ったのですが、町の名前を書く習慣だそうです。

 チェス・プロブレム雑誌の中では、おそらくThe Problemistと並んで、Die Schwalbが最高峰に属するものと思います。3手メイトに続いて、ヘルプ・メイトも掲載されたことをうれしく思います。

 次は、 The Problemist本誌に作品を掲載したいですね。実は、昨日できたばかりの作品を投稿したら、さっそくSupplementに掲載されました。ちょっとシンプルすぎたので、本誌のレベルには届かないと思いましたので。次は本誌目指してがんばりたいですね。

Problem Paradiseにチェス・プロブレム2作掲載!

 若島正さんが編集される日本のチェス・プロブレム専門誌Problem Paradiseの最新号(第70号)に、わたしの創作したチェス・プロブレムが2作掲載されています。

 1つ目はヘルプメイトです。

Helpmate

 3つの解があります。黒ポーンの配置から、この作品で何を狙っているのかは、だいたいお察しいただけると思います。本当は4つの解が理想的なのですが、もう1つをどうしても入れることができませんでした。

 もう1つがフェアリー問題です。

Fairy

 この問題には非常に時間と労力を注ぎました。この問題には4つの解があります。創作のきっかけは違うのですが、結果的に上の問題でできなかったことのリベンジのような形になりました。

 この問題はヘルプセルフ・メイトになっています。白と黒とが協力して(ヘルプ)、白をチェックメイトに追い込む(セルフ・メイト)というタイプの問題です。

 その上で、Platz Wechsel Circe (PWC)という条件設定になっています。キルケ(Circe)は、相手に取られた駒が復活するという条件ですが、PWCの場合、復活する場所が取った駒が直前にいた位置になります。つまり、場所交換(ドイツ語でPlatz Wechsel)するということです。

 この問題の場合、さらに複数のツイン(Twin)があります(4つなのでquadというべきでしょうが)。ツインというのは、問題図からの一部変更で、類似した別の問題になるということです。一部変更で許されるのは、通常は、一度に1つの駒の追加または消去、あるいは1つの駒の移動までで、複数の駒を変化させたりするのはよろしくない、とされているようです。

 この問題では、

a)が盤面
b)がそこからe6にある黒ナイトを消去した局面
c)がb)の局面から出発して、e7にある黒キングをh5に移動した局面
d)がc)の局面から出発して、g5にある黒クイーンをe8に移動した局面

という結構複雑な構造になっています。

 問題づくりに苦労したのもそうですが、この問題の場合、検討用に使っているプログラムPopeyeへのインプットをどうすれば、上記のような複雑なツインが設定できるのかについてもそれなりに悩みました。参考までに、プログラムを以下に示します。

BeginProblem
Stipulation hs#2
Condition PWC
Pieces
White Kh7 Qf4 Pg7
Black Ke7 Qg5 Bf8 Se6 Pe5
Twin Remove e6
Twin Cont Move e7 h5
Twin Cont Move g5 e8
EndProblem

 ただ、普段使っていたPopeyeのGUIインターフェイスであるAnkonaは、この書式をサポートしておらず、管理者さんに相談したところ、少し工夫してもらえました。

 ということで、色々と苦労した問題ですので、楽しんでいただければ幸いです。

2015年10月21日 (水)

Die Schwalbeに3手メイト掲載!

 今日、家に帰ったら、ドイツで老舗のチェス・プロブレム雑誌Die Schwalbeの10月号が届いていました。ここに、わたしの創作した3手メイトが掲載されています。Die Schwalbeには初掲載です。

Fig01

 Die Schwalbeといえば、これまでも数多くのパスブレーキングなプロブレムを掲載してきた名門。そこに自分のプロブレムが掲載されたのは、本当にうれしいです。

 ちなみに、掲載されたプロブレムは実に単純なものですが、修正なしですぐに採用されました。初投稿ということで、大目に見てもらえたのかもしれませんね。

 3手メイト担当編集者のHans Gruberさんは心理学者で、多くのチェス・プロブレムの本を出版していることでも有名です。紹介文では、Mit 16444 stelle ich erstmals einen japanischen Beitrag vor (「日本人の投稿作を紹介するのは、この16444番が初めてです」)とあります。少なくとも、3手メイトではわたしが最初だったんでしょうね。

 イギリスで老舗の雑誌The Problemist Supplementでも、初掲載は3手メイトでしたので、このジャンルにはどうも縁があるようですね。

 ここ最近はなかなか創作する時間がないのですが、これを機会にまたチャレンジしてみたいです。

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2015年9月24日 (木)

StrateGemsにチェス・プロブレム4作掲載!

 最近、立て続けに同じような記事を書いていますが、本日アメリカから届いたチェス・プロブレム雑誌StrateGemsに、わたしの作品が4作掲載されていますので、またまたご報告です。

 最初に3手メイトで2作です。どちらもちょっとしたアイディアだけの小品です。キー・ムーブの意外性はなるべく追求したつもりです。

Fif01

Fig02

 次は、5手メイトです。先日のThe Problemist Supplementに掲載された4手メイトの後、今度はさらに手数を長くして5手メイトに挑戦してみたのがこれです。偶然タイミングが良かったのか、電子メールで投稿してからわずか20分で採択通知がきました。これまでで最短の記録です。

Fig03

 最後はフェアリー問題です。Disparateというフェアリー条件を使っています。これは、相手が動かした種類の駒を、直後だけは動かしてはいけない、というルールです。

 このセクションの担当者であるPetko Petkov氏がDisparateに関する記事を書いているのですが、そこにセルフメイトが1つもなかったので(氏はセルフメイトの大家として知られて いるのに)、チャレンジしてみた次第です。2手メイトのツインはおまけみたいなものです。

Fig04

 次号にもいくつか掲載されると思います。ここしばらくは、色々と別件が忙しくて創作できていませんが、10月はまた色々と頑張ってみたいと思います。

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2015年9月21日 (月)

The Problemist Supplementに4手メイト掲載!

 今朝、Problem Paradiseに掲載されたチェス・プロブレムのことを書いたばかりですが、今日の午後にイギリスで老舗のプロブレム雑誌The Problemistが届き、そのSupplementにわたしの作品が掲載されていましたので、続けてブログ記事を書くことになりました。

 今回掲載された作品は4手メイトです。3手以上の問題を作ろうと思い、インディアンというテーマでできないか? と色々と試している際にできあがったものです。結果的にはインディアンではないのですが、ポーンの配置が面白いことになっているのではないかと思います。

 ちなみに、#4の後に付いている*はset play(黒から指し始めた場合の詰手順)があるという意味です。

Fig

 さて、もう一つ面白いことがあります。今回、昨年惜しまれつつお亡くなりになったプロブレム作家のPaul Valoisさんの蔵書がメール(郵便)でのオークションにかけられることになり、そのリストが同封されていたのです。

 説明を見ますと、「最高の価格を提示した者に、2番目に高い価格プラス10%で売却する。ただし、最高価格が後者の値を下回る場合は、提示された最高価格で売却する」とあります。つまり、二位価格オークション(second price auction)になっています。

 スタッフに経済学者がいたのか(かつて主要メンバーだった故Robin Matthewsさんは有名な経済学者)、あるいは切手オークションの経験者がいたのか、ちゃんと二位価格オークションを使うところはさすがだなあと思いました。

 ちなみに、二位価格オークションの性質やその歴史については、拙著『マーケット・デザイン』に詳しく書いてありますので、ご興味のある方はご参照ください。


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